2015年02月03日

『アメリカン・スナイパー』お薦め映画

★★★★ 2014年製作 米 (132 min)
【監督】クリント・イーストウッド(バード、ジャージー・ボーイズ、ミリオンダラー・ベイビー、グラン・トリノ)
【出演者】
ブラッドリー・クーパー(世界にひとつのプレイブック、ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い、ハングオーバー!! 史上最悪の二日酔い、国境を越える、プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ / 宿命)
シエナ・ミラー(ファクトリー・ガール、G.I.ジョー、カサノバ、アルフィー)
ルーク・グライムス(96時間 /リベンジ)
ジェイク・マクドーマン、ナヴィド・ネガーバン、キーア・オドネル、ケビン・ラーチ
【あらすじ】9.11以降のイラク戦争。 米海軍特殊部隊ネイビー・シールズに入隊を果たしたクリスは、卓越した狙撃の精度で多くの仲間の危機を救い“レジェンド”の異名を轟かせる。 しかし敵からは“悪魔”と恐れられ、その首には18万ドルの賞金が掛けられていた。 極限状況の戦地への度重なる遠征は、クリスの心を序々に蝕んでいく…。 伝説的スナイパーの半生。 R-15

『アメリカン・スナイパー』象のロケット
『アメリカン・スナイパー』作品を観た感想TB

画像(C)2014 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED, WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC All rights reserved.

sniper1.jpg 【解説と感想】2月1日早朝、シリアやイラクの一部を実質的に支配しつつある中東の過激派ISILまたはISIS(いわゆる“イスラム国”)による邦人人質事件は、最悪の結末を迎えた。更に彼らは、日本国民への無差別殺害警告まで発した。その非道なやり方は許せないし、日本全体で“イスラム国”憎しの感情が高まっている。それでも私たち日本人は「目には目を、歯には歯を。」といった報復措置は取らない。中東を爆撃したりしないし、“イスラム国”とは何の関係もないイスラム系やイスラム教の人々を差別したりもしない…はずであるし、そうでなければならない。

sniper2.jpg 本作は実在の兵士クリス・カイル(1974〜2013)の回顧録に基づいている。彼は1999年にアメリカ海軍特殊部隊(ネイビーシールズ)に入隊し、狙撃手(スナイパー)としてイラク戦争に4回出兵した。その間、公式記録としては米軍史上最多の160人を射殺(非公式記録ではもっとずっと多いという)している。

通常、戦地でのクリス・カイル(ブラッドリー・クーパー)は、屋上の見晴らしの良い場所で静かに銃を構えている。彼の任務は、味方の兵士を殺そうとしている敵を、先に殺してしまうこと。自爆テロや、手榴弾、銃を手にしていると思われるのは、成人男性ばかりではなく女子供までいる。自らの判断で、危ないと思ったら引き金を引く。即断即決のストレスはいかばかりか。戦闘シーンはリアルで、爆風で吹き飛ばされてしまいそうな臨場感がある。

sniper3.jpg 常に紛争地域に介入している軍事大国アメリカ。「野蛮なテロリストたち」を一掃し、9.11事件を繰り返してはならないという強い信念の下、クリスたちは命を懸けて戦っている。仲間一人の死が、部隊に与えるショックは大きい。一方、敵は何人殺そうが、痛くも痒くもない。敵が殺されるとホッとする。見ている方もだんだんそんな気になってくるから、慣れというのは恐ろしい。しかし本当にクリスは「敵ならいくら殺しても平気」だったのだろうか?

sniper4.jpg 美しい妻(シエナ・ミラー)と、かわいい盛りの子供たちを残して戦場へ向かうクリス。妻は一刻も早く退役して欲しいと願っている。しかしクリスは、家族と過ごす平和な毎日の方に違和感を感じている。大きな音がすると、本能的に身構えてしまう。クリスは病んでいる。明らかに多くの帰還兵たちを苦しめてきたPTSD(心的外傷後ストレス障害)の症状だ。いくら任務とはいえ、人を殺して平気なはずがない。何度も死にかけて平常心でいられるはずがない。むしろ、病んでこそ正常な人間といえるだろう。もし戦争で心を病んだ人が事件を起こしたら、それは誰の責任になるのだろうか?

sniper5.jpg 本作をイラク戦争の正当化や、スナイパーを英雄視する映画だと思われる方もいるかもしれないが、鑑賞後の印象は逆である。だからといって、戦った兵士たちを貶めるものでもない。イラク戦争の時と同じように現在、アメリカが主導する対テロ有志連合は、“イ
スラム国”掃討作戦を行っている。今回の邦人人質殺害事件により、日本人にとっても中東は“よく分からない遠くて関係のない地域”ではなくなった。私たちが紛争地域(紛争の理由や、困っている人々)にもっと関心を持つことは、ジャーナリスト後藤健二さんの願いでもあると思う。イラク戦争が、一人のアメリカ人兵士に与えた影響を描く実話物語。お薦め作品だ。

(象のロケット 映画・ビデオ部 並木)


 
posted by 象のロケット at 15:48| Comment(1) | TrackBack(23) | 超お薦め映画作品 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする