2018年01月22日

『スリー・ビルボード』お薦め映画

★★★★★ 2017年製作 英・米 (116 min)
【監督】マーティン・マクドナー(セブン・サイコパス)
【出演者】
フランシス・マクドーマンド(スタンドアップ、バーバー、容疑者、バーン・アフター・リーディング)
ウディ・ハレルソン(ラリー・フリント、ゾンビランド、ナチュラル・ボーン・キラーズ、猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー))
サム・ロックウェル(ウェルカム トゥ コリンウッド、月に囚われた男、コンフェッション、マッチスティック・メン
アビー・コーニッシュ、ジョン・ホークス、ピーター・ディンクレイジ
【あらすじ】アメリカ・ミズーリ州の田舎町エビング。 さびれた道路沿いの広告看板に、地元警察の署長ウィルビーを批判するメッセージが表示される。 それは、7ヶ月前に娘を殺された母親ミルドレッドが、進展しない捜査に腹を立てて出した広告だった。 人望あるウィルビーを攻撃したことで、ミルドレッドは非難を浴びることに…。 クライム・サスペンス。
トロント国際映画祭観客賞、ベネチア国際映画祭脚本賞

『スリー・ビルボード』象のロケット
『スリー・ビルボード』作品を観た感想TB

画像Copyright:(C)2017 Twentieth Century Fox Film Corporation All rights reserved.

three1.jpg 【解説と感想】ひったくり、盗撮、ストーカー、レイプ、拉致監禁、殺害、人身売買…等、女性は常に犯罪の被害者になる危険にさらされている。しかし、露出の多い服を着るな、夜遅くまで出歩くな、男性と2人きりになるな、という親の注意を聞き入れる若い女性がどれほどいるだろうか。

さて、本作の主人公は、中年女性ミルドレッド(フランシス・マクドーマンド)。彼女の娘は7か月前、夜道でレイプされた挙句に殺害された。犯人はまだ見つからない。業を煮やした彼女はなけなしの金で広告会社と契約し、道路沿いの広告看板に「レイプされて死亡」「なぜ? ウィロビー署長」「犯人逮捕はまだ?」という思い切ったメッセージを掲示する。

three2.jpg 本来なら世間の同情を一身に集めるはずのミルドレッドという女性、全く可哀想に見えない。女らしさも愛想もなく、毒舌家でケンカっ早く、見た目も凶暴な中年オヤジのよう(戦闘鉢巻のようなバンダナはイカしてるが)。一方、彼女が批判した地元の警察署長ウィロビー(ウディ・ハレルソン)は住民や部下から敬愛されており、町の誰もが彼女に広告を止めさせようと働きかける。

3枚の屋外広告(スリー・ビルボード)によって、ミルドレッドの立場は被害者の母親から、乱暴者の加害者へとすり替わってしまう。作品中では、この「見方が変わる」というポイントが随所に現れていて、先が読めない面白さがある。

three3.jpg ミルドレッドの行動はエスカレートしていき、もはやテロ。だんだん同情できなくなっていく。意外なことに、彼女の胸の内を一番理解しているのは、大迷惑を被った被害者(?)の署長ウィロビーなのだ。彼だって捜査を怠っていたわけではない。ただし、彼の部下ディクソン(サム・ロックウェル)は怒りが収まらず、ミルドレッドの天敵と化す!

物語は早く犯人を逮捕しろと急かす広告から始まる。しかし、警察批判、人種差別、村八分、家庭不和、不治の病、暴力事件など、魅力的な回り道がいっぱいあって、なかなか犯人探しが進まない。果たして事件は解決するのか?

three4.jpg 警察が真剣に捜査しても、家族がビラ配りをしても、マスコミが繰り返し報じても、懸賞金があっても、迷宮入りしてしまう事件は多々あり、被害者家族は、無念の思いをどこにもぶつけられずにいる。前へ進めない人もいるだろう。普通、ミルドレッドのような行動を起こす者はいないのだ。本作のテーマは重いし、署長の行動も重い。だが、作品全体がブラックな笑いに包まれている。ぶっ飛んだ事件が次から次へと発生し、毒舌合戦にはキレがあり、悲しい場面でもしんみりさせてくれない。これはいったい、どういったジャンルの作品なのかと観客を迷わせる。

ところが、私たちが予想だにしない結末が待っている。本作がどんな作品なのかは、最後まで見なければわからない。西部劇の一匹狼のような風貌の母親を演じるフランシス・マクドーマンド、物わかりのいい人情派の署長役のウディ・ハレルソン、浅はかな白人警官役のサム・ロックウェル、彼らの見事な演技に圧倒され引き込まれる、シリアスでユーモアたっぷりのクライム・サスペンス。お薦め作品だ。

(象のロケット 映画・ビデオ部 並木)

 
 
posted by 象のロケット at 20:28| 超お薦め映画作品 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする