2018年03月27日

『心と体と』お薦め映画

★★★★★ 2017年製作 ハンガリー (116 min)
【監督】イルディコー・エニェディ
【出演者】
アレクサンドラ・ボルベーイ
ゲーザ・モルチャーニ
レーカ・テンキ
エルヴィン・ナジ、ゾルターン・シュナイダー、イタラ・ベーケーシュ、タマーシュ・ヨルダーン
【あらすじ】ハンガリーの首都ブタペスト郊外にある食肉処理工場。 臨時の女性食肉検査員マーリアは、人付き合いが苦手で職場に馴染めない。 片手が不自由な男性役員エンドレは、そんな彼女を何かと気に掛けていた。 工場で盗難事件が発生したため、全従業員が精神分析医からカウンセリングを受けることになり、夢の話をきっかけに2人は急接近していく…。 ラブ・ファンタジー。
ベルリン国際映画祭金熊賞、国際批評家連盟賞、エキュメニカル審査員賞、ヨーロッパ映画賞最優秀女優賞、他多数受賞

→『心と体と』象のロケット
『心と体と』作品を観た感想TB

画像Copyright:(C)2017(c) INFORG - M&M FILM All rights reserved.

kokoro1.jpg 【解説と感想】夢とはロマンチックなものと思っていたのに、「レム睡眠」や「ノンレム睡眠」、そして精神分析医フロイトの「夢判断」などを学校で習った時は興醒めしたものだ。それでも夢分析に正解はないし、夢で見たことが現実に起こる予知夢のような「正夢」、夢とは逆のことが起こる「逆夢」などを実際体験した日には、夢が神のお告げのような気もしてくる。…考えすぎると楽しい夢が見られなくなってしまうので、この辺で。

kokoro2.jpg 本作の舞台は、次々と牛が解体されていくハンガリーの食肉工場。ところが途中で唐突に、美しい鹿の映像が頻繁に登場してくる。ムムッ、なんだ? と思われるだろうが、その意味は後で分かる。

本作のヒロインは、食肉処理工場の臨時食肉検査員マーリア(アレクサンドラ・ボルベーイ)。 若くて美人だが、人付き合いが苦手で愛想笑いや世間話ができないタイプ。仕事も良く言えば真面目、悪く言えば杓子定規で融通が利かない。いつしか従業員たちは彼女のことを、陰で「白雪姫」と呼ぶようになった(褒め言葉ではない)。

kokoro4.JPG 彼女は、近年世間で認知度を増している発達障害「アスペルガー症候群」のように見える。つまり、優秀な一面もあるが社会性や想像性に欠けており人間関係が苦手で、昔なら「変わり者」扱いされていた人である。ただ、本作では彼女を「発達障害の患者」としてではなく「アスペルガーみたいな人」として描くにとどめている。

そんな、職場で浮いた存在のマーリアのことを、片手が不自由な中年独身男性役員エンドレ(ゲーザ・モルチャーニ)は、何かと気に掛けてやっていた。しかし、マーリアがあまりに愛想がないので会話が続かない。エンドレは大人だから気を悪くしたりはしないのだが、彼自身も食肉工場には多少不似合いな人物に見える。他の従業員とは空気感が違うのだ。

kokoro5.jpg そんな、違うけどちょっと似ている気もする2人は、夢の話をきっかけに急接近してゆく。会話は前より増えたが、どこまでもエンドレは紳士的で、マーリアは愛想がない。このままだとこれ以上は進展しないのではと心配になってくるが、その過程が面白くて、気まずく噛み合わない会話に笑わせられる。

やり手ババア風の掃除係の女性とマーリアとの会話にも爆笑だ。このシーンは、マーリアが無表情な受け答えでスルッと本音を語るし、恋する女性の可愛らしさも出ていて素晴らしいと思う。なお、エンドレ役の俳優はベテランに見えるが、意外なことに映画初出演だという。彼は元編集者で脚本家なのだそうだ。監督によると、「素人でも役にフィットしている」ことが重要なのだとか。これには恐れ入った。

kokoro3.jpg 夢と現実が同時進行しても単なるファンタジーに見えず、地に足がついた感がするのもスゴイ。実は、夢はあまり重要ではないのかもしれない。孤独な男と女が、ぎこちなく愛を育んでいく一風変わったラブ・コメディ。お薦め作品だ。

(象のロケット 映画・ビデオ部 並木)

 
 
posted by 象のロケット at 11:45| Comment(0) | 超お薦め映画作品 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする