2018年05月06日

『のみとり侍』お薦め映画

★★★★ 2018年製作 日 (110 min)
【監督】鶴橋康夫(後妻業の女、愛の流刑地、源氏物語 千年の謎)
【出演者】
阿部寛(テルマエ・ロマエ、大帝の剣、麒麟の翼 劇場版・新参者、青い鳥)
寺島しのぶ(オー・ルーシー!、キャタピラー、やわらかい生活、下町ロケット)
豊川悦司(ラプラスの魔女、大停電の夜に、ハサミ男、今度は愛妻家)
斎藤工、風間杜夫、大竹しのぶ、前田敦子
【あらすじ】老中・田沼意次の規制緩和により、金になるなら大抵のことが許された江戸の世。 越後長岡藩の勘定方(会計係)として出世街道を邁進していた小林寛之進は、藩主・忠精の逆鱗に触れ左遷されてしまう。 その左遷先は江戸の貧乏長屋で、仕事は猫の“蚤(のみ)とり”。 しかし、実は女性に“愛”をご奉仕する裏稼業だった…。 時代劇。
原作:小松重男

『のみとり侍』象のロケット
『のみとり侍』作品を観た感想TB

画像Copyright:(C)2018「のみとり侍」製作委員会

nomi1.jpg 【解説と感想】暗黙の了解とは、単刀直入に口にすることが憚られることを、相手に直接言わなくても話が通じることを言う。似たような言葉で、昨年から「忖度:そんたく:はっきり言われる前に相手の意向を察して行動すること」という言葉が大流行している。しかし中にはそれが全く通じない奴がいて、その場が白けてしまったり、ホトホト困ったりするものだ。「おいオマエ、それくらい察しろよ!」 と怒鳴りつけたくなるが、何を隠そう私もかなり鈍い方である。

nomi2.jpg 本作「のみとり侍」は、猫の蚤(ノミ)取り稼業をすることになった越後長岡藩勘定方(会計係)小林寛之進(阿部寛)が主人公。失言から藩主(松重豊)の逆鱗に触れ、「お前みたいな奴はのみとりになれ!」と言われてしまう。世間知らずの寛之進には「のみとり」が何なのかサッパリわからない。「のみとり屋」の主人(風間杜夫)とその妻(大竹しのぶ)は一応仕事の説明をするが、それはノミ取り道具の使い方だけで、あとは思わせぶりな言葉と目配せのみ。鈍い寛之進もやっと最後には合点がいく。「さては、あのコトか!」と。

nomi3.jpg つまり、紅を差し着飾った男が市中を「猫のノミとりましょう!」と練り歩き、それを聞いた女が声をかけて男を家や宿に引き入れコトに及ぶ売春行為は、江戸では暗黙の了解となっている。男どもは一応ノミ取りの小道具を持っている。かように面倒なことをするのは、大っぴらには男を買えないからだろう。売春婦が上は吉原の花魁から下は裏道に立つ夜鷹まで様々な格付けがあったように、陰間茶屋の男娼にもランキングがあったようだが、「のみとり男」の格付けはそう高くなさそうだ。

nomi4.jpg今でいえば県庁のエリートが突然左遷され、出向先が東京の売春組織で、ポン引きならまだしも男娼をさせられるようなもの。そんな理不尽なことが万が一あっても従う公務員はいないはずだが、そこは主君の命令が絶対の江戸時代。真面目な寛之進は「殿がこの特殊な仕事をお命じになったのには、何か深い理由があるに違いない!」と勝手に忖度し、頑張っちゃうのである。最初の客おみね(寺島しのぶ)に「ヘタクソ!」と怒鳴られれば、その道のプロ清兵衛(豊川悦司)に恥を忍んで教えを乞い「勉強」に励んだものだからアッという間に上達! 師匠直伝の四十八手に女たちはメロメロになってしまう。
nomi5.jpg 清兵衛の艶っぽさに比べ、寛之進はどーにも色気がないが、伊達男二人の絡み(男同士の…ではない、念のため)は面白い。

浪人・佐伯友之介(斎藤工)ら長屋の住民との交流を経て、庶民の貧しい暮らしと武士の身分を失った者の悲しい人生を知る寛之進。もう「のみとり」なんてやめちまえよ、バカ殿に忠義を立ててどうするのさ、と思うが、寛之進には殿を裏切るなんてことは出来ない。さて、彼はこのまま男娼の道を上り詰めたのか? 全く別の人生を歩んだのか、それとも本当に「のみとり」が殿のお役に立ったのか…? 浮世の人情話と色話、忠義話を取り混ぜた軽快な時代劇コメディ。お薦め作品だ。

(象のロケット 映画・ビデオ部 並木)


 
posted by 象のロケット at 19:56| MDプリンタ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする