2019年01月30日

『七つの会議』お薦め映画

★★★★ 2019年製作 日 (119 min)
【監督】福澤克雄(祈りの幕が下りる時、私は貝になりたい)
【出演者】
野村萬斎(のぼうの城、陰陽師、陰陽師 II、スキャナー 記憶のカケラをよむ男)
香川照之(市川中車)(フリック、トウキョウソナタ、ゆれる、劔岳 点の記)
及川光博(半沢直樹 、相棒 -劇場版 II- 警視庁占拠!特命係の一番長い夜、大奥、古畑任三郎 すべて閣下の仕業)
片岡愛之助、音尾琢真、藤森慎吾(オリエンタルラジオ)、朝倉あき

【あらすじ】都内にある中堅メーカー東京建電で、パワハラ騒動が起こる。 加害者はトップセールスマンの課長・坂戸(さかど)で、被害者は年上の部下で万年係長の八角(やすみ)だった。 パワハラ委員会の不可解な裁定に社員たちが揺れる中、万年二番手に甘んじてきた原島が新課長に抜擢される。 だがそこには、ある秘密と闇が隠されていた…。 ミステリー。
原作:池井戸潤 主題歌:ボブ・ディラン『メイク・ユー・フィール・マイ・ラヴ』

『七つの会議』象のロケット
『七つの会議』作品を観た感想TB

画像Copyright:(C)2019映画「七つの会議」製作委員会

nanatsu1.jpg 【解説と感想】 私生活は二の次にして仕事第一で働くのが、かつては社会人として正しい姿だった。今はプライベート優先で、残業も飲み会も社内行事も悪びれもせず断る社員が増えているという。ああ、一度でいいからドライに割り切れる人間になってみたい!

nanatsu3.jpg 本作の舞台は、東京都内の中堅メーカー「東京建電」。人望も熱いトップセールスマンの営業一課長・坂戸宣彦(片岡愛之助)が、年下の万年係長・八角民夫(野村萬斎)からパワハラで訴えられる。八角(ヤスミ)は、会議中も堂々と居眠りをすることから社内では「居眠りハッカク」と呼ばれている。そのグータラぶりに坂戸が激怒したのだ。非は八角にあると思われたが、なぜか親会社ゼノックスの倫理規定に則って坂戸は左遷され、万年二番手の原島万二(及川光博)が華の一課長に抜擢された。

「七つの会議」というタイトル通り、いくつもの会議が行われる。社内の絶対権力者である営業部長・北川誠(香川照之)が檄を飛ばし、各部署に高いノルマを課す。東京建電はいわゆる古い体質の企業で、何が何でも売り上げを達成しなければ生き残れない。怒鳴り散らす北川の方がよっぽどパワハラ上司なのだが、実はこのパワハラ提訴は大した問題ではなかった。ここから東京建電のみならず、親会社ゼノックスを巻き込む途方もない問題へと発展してゆくのだが、それ以上は劇場でご確認を。

nanatsu4.jpg 主人公を演じる野村萬斎は、俳優としても引く手あまたの狂言師。映画「陰陽師」で安倍晴明を演じたことから、フィギュアスケートの金メダリスト羽生結弦選手が「陰陽師」の劇中音楽をアレンジした曲「SEIMEI」を使った際には、和の動作のアドバイスを授けたという。世田谷パブリックシアター芸術監督を務めたり、2020年東京オリンピック・パラリンピックのクリエイティブ・ディレクターに就任したりと、本業以外でも大忙し。企業人の経験はあるはずもないお方だが、意外にも八角役にマッチしている。というのも、八角は一匹狼のはぐれ社員。「のぼうの城」で演じた“でくのぼう城代”のように飄々としながらも、かなり毒気のある人物で腹黒くも見える。

nanatsu2.jpg 小さい会議は報告を兼ねて便宜上行われるだけ、中くらいの会議は社内の力関係と根回しに左右され、大きな会議は結局はトップが決断を下す。つまり、登場する会議のどれもが、ほとんど意味をなしていない。それでも会議は社内の最重要事項として行われる。グータラでも八角は新卒時から東京建電で働いている生え抜き社員。会社を愛する気持ちもあるだろう。八角の不穏な行動は、結局は会社のためになるのではと思われるが…?

原作は、企業小説で絶大な支持を得ている作家・池井戸潤。サラリーマンやOLの心意気と残念のあるあるが詰まった、企業犯罪エンターテインメント。お薦め作品だ。

(象のロケット 映画・ビデオ部 並木)

 
 

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2019年01月11日

『天才作家の妻 40年目の真実』お薦め映画

★★★★ 2017年製作 スウェーデン・英・米 (101 min)
【監督】ビョルン・ルンゲ
【出演者】
グレン・クローズ(101、彼女を見ればわかること、アルバート氏の人生、白と黒のナイフ)
ジョナサン・プライス(未来世紀ブラジル、エビータ、パイレーツ・オブ・カリビアン ワールド・エンド、007/トゥモロー・ネバー・ダイ)
クリスチャン・スレーター(マンハッタン花物語、クライム&ダイヤモンド、告発、インビジブル2)
マックス・アイアンズ、ハリー・ロイド、アニー・スターク、エリザベス・マクガヴァン
【あらすじ】現代文学の巨匠となったアメリカの作家ジョゼフ・キャッスルマンの、ノーベル文学賞受賞が決定。 授賞式に出席するため、妻ジョーン、駆け出しの作家の息子デビッドと共にスウェーデンを訪れた夫ジョゼフは、有頂天だった。 ホテルのロビーで、妻ジョーンは記者ナサニエルから思いがけない質問をぶつけられる…。 ヒューマンドラマ。

『天才作家の妻 40年目の真実』象のロケット
『天才作家の妻 40年目の真実』作品を観た感想TB

画像Copyright:(C)META FILM LONDON LIMITED 2017 All rights reserved.

wife1.jpg 【解説と感想】 ノーベル賞受賞者の発表後は、受賞者の業績はもちろん、生い立ち、家族、母校、私生活などが話題となり、尊敬の念を持って報道される。歴代の日本人受賞者は謙虚な好人物のように見受けられると共に、一般人とは次元が違う独特の雰囲気も漂わせている。彼らは歴史に名を残す、特別な方々なのだ。
なのに本作は、老夫婦のベッドシーンから始まる。まだまだ性欲衰えない夫ジョゼフ(ジョナサン・プライス)に呆れながらも、付き合うしかない妻ジョーン(グレン・クローズ)。そこへ、夫にノーベル賞受賞の報せが入る。これでもジョゼフはアメリカ現代文学の巨匠で、世界に名を知られた大作家なのだ。ベッドの上で飛び上がって喜んだ夫妻は、駆け出し作家の息子デビッド(マックス・アイアンズ)を伴い、授賞式が行われるスウェーデンのストックホルムへ向かう。

wife2.jpg 大勢の報道陣の中で、1人だけ嫌な記者がいた。ジョゼフの伝記を書くつもりだという男性記者ナサニエル(クリスチャン・スレーター)は、ジョーンにとんでもない質問をぶつける。夫ジョゼフの作品は、実は妻ジョーンが書いたものではないかと言うのだ。失礼極まりない質問なので、当然ジョーンは相手にしない。しかしナサニエルはしつこくて、息子デビッドまでが両親に疑念を抱き始めた。

本作の見どころの一つはノーベル賞受賞式の舞台裏で、受賞第一報から、現地の出迎え、ホテルの接遇、現地の案内、式典リハーサル、記念パーティー、料理やファッションなど、一般人が知りたい情報がコンパクトに詰め込まれている。高待遇をもって迎えられる受賞者も、会場では大勢の出席者の1人。それでもジョゼフとジョーンには、巨匠とその妻という輝きと風格がある。歳を取ると、失われる若さと引き換えに、こんないい味が出てくるのだ。もちろん生き方次第だが…。

wife3.jpg 妻ジョーンはだんだん落ち込んでいく。ナサニエルのせいで、昔の自分を思い出してしまったからだ。若い頃の彼女(アニー・スターク:グレン・クローズの実の娘)は作家を目指していて、妻子持ちの若い教授ジョゼフ(ハリー・ロイド)の教え子だった。ジョーンには才能があったが、当時は女性作家が成功するのは困難な時代。やがて、ジョーンは略奪愛の末にジョゼフと結婚し、子宝にも恵まれた。夫はノーベル賞作家となり、妻としては文句のつけようのない勝ち組となったが、果たして彼女は幸せだったのか…? 

wife4.jpg 妻ジョーンは終始ポーカーフェイスで落ち着き払っており、記者に本音を話さない。それだけでも、彼女がタダ者ではないことが分かる。一方、能天気にはしゃいでいる夫ジョゼフはエロ親父ぶりも発揮し、だんだんアホに見えてくる。ただ、下半身と才能は関係ないのかもしれないし…?

結局のところ、天才作家は夫と妻のどちらだったのか? もちろん私が明かすわけにはいかない。夫婦の絆は外から窺い知ることはできないし、ひょっとしたら当人同士だって真実に気づいていないかもしれない。天才作家を40年間支え続けた妻が一番大切にしたかったものが明かされる、格調高い大人の夫婦のドラマ。お薦め作品だ。

(象のロケット 映画・ビデオ部 並木)

 
 
posted by 象のロケット at 11:23| 超お薦め映画作品 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする