2019年02月27日

『天国でまた会おう』お薦め映画

★★★★★ 2017年製作 仏 (117 min)
【監督】アルベール・デュポンテル
【出演者】
ナウエル・ペレーズ・ビスカヤート
アルベール・デュポンテル(プレイ - 獲物 - 、ブルー・レクイエム、アレックス)
ローラン・ラフィット(ミモザの島に消えた母、エル ELLE 、ムード・インディゴ うたかたの日々)
ニエル・アレストリュプ、エミリー・デュケンヌ、メラニー・ティエリー、エロイーズ・バルステール
【あらすじ】1918年、西部戦線で仲間のフランス軍中年兵アルベールの命を救った若き兵士エドゥアールは、顔に重傷を負ってしまう。 帰還後、アルベールは家に帰りたくないというエドゥアールの戦死を偽装し、アパートで彼の面倒を見ることに。 声を失ったエドゥアールの想いを理解する幼い孤児の少女ルイーズも巻き込んで、3人は大胆な詐欺を企てる…。 ヒューマンドラマ。 ≪共に生きた時間に、一生分の輝きがあった。≫
セザール賞脚色賞・監督賞・撮影賞・衣裳デザイン賞・美術賞 原作:ピエール・ルメートル

『天国でまた会おう』象のロケット
『天国でまた会おう』作品を観た感想TB

画像Copyright:(C)2017 Stadenn Prod. - Manchester Films - Gaumont - France 2 Cinema All rights reserved.

seeyou1.jpg【解説と感想】 フランスのベストセラー作家ピエール・ルメートルによる本作の原作「天国でまた会おう」は、世界大戦三部作の第1部で、第一次世界大戦終結が間近に迫った1918年の西部戦線から始まる。第2部は「炎の色」、第3部はまだ出版されていない。ハードボイルド調の物語が、映画ではドラマティックに脚色されていて見事だ。

主人公の中年男アルベール・マイヤール(アルベール・デュポンテル:本作の監督と脚本も担当)は、第一次世界大戦のフランス軍帰還兵。貧しい育ちの気の弱いお人好しで、いつも残念な表情をしている。元の職場には戻れず失業し、婚約者からは振られ、踏んだり蹴ったり。だが、戦場で死にかけたからこそ、生きることに執着している。食うために働く、まさに一般庶民の象徴。彼を見るとつい笑ってしまう。

seeyou2.jpg 一方、戦場でアルベールの命を救ったために爆撃で顔の半分を吹き飛ばされてしまった不運な若者エドゥアール・ペリクール(ナウエル・ペレーズ・ビスカヤート)は、元々はハンサムなお坊ちゃまで絵を描くのが上手かった。生きる意欲を失くし痛み止めのモルヒネ中毒となっているが、美と復讐への執着を持つアーティスト。様々な自作の仮面を被っており、その奥で光る目がハッとするほど美しい。ほとんど言葉を発しないし顔も見えないが、十分魅力的なもう一人の主人公である。彼を見ると悲しくなってしまう。

seeyou4.jpg そして、前世からの因縁のように事あるごとに彼らの行く手を阻む悪役が、西部戦線で2人の上官だったドルネー・プラデル中尉(ロラン・ラフィット)。出世欲の塊で金への執着がすさまじい、庶民の敵。彼を見ると怒りがこみあげてきてしまう。

戦争がなければ、3人が出会うこともなかった。その戦争を起こしたのは敵・味方の両方の国家であり、戦争で得をしたのはエドゥアールの父(ニエル・アレストリュプ)のような金持ち連中。祖国のために命がけで戦った英雄なのに、今や国からお荷物扱いされている哀れな帰還兵は、本当は誰を恨めばいいのだろうか。

seeyou3.jpg アルベールは、命の恩人エドゥアールの介護と不慣れな仕事でヘトヘト。恩給の支給手続きも遅れていて生活は困窮を極める。しかし、近所の幼い少女ルイーズ(エロイーズ・バルステール)との交流で気持ちが明るくなったエドゥアールは、絵を描く気力を取り戻し、なぜか大それた詐欺計画まで思いつく。大金を欲しがる男には見えなかったのだが…?

seeyou5.jpg 原作とは多少異なる先が読めない展開で、衝撃的で美しい終盤のシーンがいつまでも心に残っている。孤独な人々が愛を求める感動的なヒューマンドラマであり、ファンタジックでミステリアスな、クライム・エンタテインメントでもある。お薦め作品だ。

(象のロケット 映画・ビデオ部 並木)


 
 
posted by 象のロケット at 17:39| 超お薦め映画作品 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年02月18日

『グリーンブック』お薦め映画

★★★★★ 2018年製作 米 (130 min)
【監督】ピーター・ファレリー
【出演者】
ヴィゴ・モーテンセン(イースタン・プロミス、はじまりへの旅、ヒストリー・オブ・バイオレンス、オーシャン・オブ・ファイヤー)
マハーシャラ・アリ(アリータ:バトル・エンジェル、ベンジャミン・バトン 数奇な人生、プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ / 宿命、ムーンライト)
リンダ・カーデリーニ(ハンターキラー 潜航せよ、シンプル・フェイバー、スクービー・ドゥー2 モンスターパニック、ブロークバック・マウンテン)

【あらすじ】1962年、アメリカ。 ニューヨークの一流ナイトクラブ「コパカバーナ」で、用心棒を務める白人男性トニー・リップ。 店が一時休業となった時期、彼は黒人男性ピアニスト、ドクター・シャーリーのコンサートツアー運転手として雇われた。 黒人用旅行ガイド〈グリーンブック〉を頼りに、2人は人種差別の激しい南部へと向かうことに…。 実話から生まれた音楽ヒューマンドラマ。。
ゴールデングローブ賞ミュージカル・コメディ部門作品賞・助演男優賞・脚本賞

『グリーンブック』象のロケット
『グリーンブック』作品を観た感想TB

画像Copyright:(C)2018 UNIVERSAL STUDIOS AND STORYTELLER DISTRIBUTION CO., LLC. All rights reserved.

greenb1.jpg 【解説と感想】 男女差別の「ビリーブ 未来への大逆転」、人種差別の「ブラック・クランズマン」、「ビール・ストリートの恋人たち」、同性愛者差別の「サタデーナイト・チャーチ 夢を歌う場所」等、これから続けざまに「差別」を描くアメリカ映画が公開される。差別に苦しむ人が、今もいかに多いかということの現れだろう。世の中から差別は決してなくならない。

本作もアメリカの人種差別がテーマで、イタリア系移民の白人中年男トニー・リップ(ヴィゴ・モーテンセン)が、黒人ピアニストのドクター・シャーリー(マハーシャラ・アリ)の運転手兼用心棒となり演奏旅行に同行するという、実話ベースの物語だ。

greenb3.jpg 時は1962年。トニーには当時の白人男性としてはごく普通の黒人差別意識があった。しかし、アメリカで割と少数派のイタリア系移民は、「ウォップ(イタリア野郎)」と呼ばれ、白人の中では少々差別されてもいた。北欧系アメリカ人のスリムでハンサムなヴィゴ・モーテンセンが、お人好しのガサツで教養のないビール腹の典型的な「イタリアおやじ」になりきっているのには驚いた!

greenb2.jpg 一方、ドクター・シャーリーは黒人の人気ピアニスト。カーネギーホールの最上階で王様のような暮らしをしている、異色のインテリ紳士。上流階級の白人は彼を持てはやすが、受け入れるのは演奏だけで、決して同格とは見なしていない。北部ならそうでもないが、南部は特に黒人差別が強い。しかし、ドクターは敢えて南部ツアーを決行した。白人に劣らぬ身の振るまいと演奏の実力で、黒人を見る白人の目を変えたかったのだろう。

タイトルの「グリーンブック」とは、黒人が利用可能な施設が記載された旅行ガイドブックで、「ジム・クロウ法(有色人種による公共施設の利用を制限する法律)」の適用が地域によって異なる南部で重宝されていた。「ドクター・シャーリー・トリオ」の他のメンバーは白人なので、移動は別行動。面倒だがちゃんとやらないと逮捕されてしまう。

ドクター・シャーリーは元々クラシック畑の人。彼のCDにはクラシックの名曲も入っていて、静かで格調高い演奏が耳に残る。黒人の演奏は受けないと言われ、やむなくジャズ系に転向したが、本当はクラシックをやりたかったのだという。博士号を取っても、演奏が上手くても、色が黒いばかりにクラシック界では認められなかった。逆に黒人の中では浮いた存在だったろう。畑の中で働く黒人労働者たちが、白人運転手を従えた彼を無言で見つめる様子が何とも言えず印象的だった。

南部のコンサートツアーはハプニングの連続。屈辱的な扱いを受けてドクターは傷つくが、気のいいトニーとの掛け合いは笑わせてくれるし、微笑ましいエピソードもある。黒人の現実を知り、トニーの差別意識は変わっていった。インテリ黒人ピアニストと粗野な白人運転手が友情を育んでいく、社会派ロードムービー。お薦め作品だ。

(象のロケット 映画・ビデオ部 並木)


 
 
posted by 象のロケット at 21:22| 超お薦め映画作品 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする