2010年02月21日

『渇き』お薦め映画

★★★★2009年製作 韓国・米 (133 min)
【監督】パク・チャヌク
【出演者】ソン・ガンホ、キム・オクビン、シン・ハギュン、キム・ヘスク、パク・イヌァン、オ・ダルス、ソン・ヨンチャン
【あらすじ】謹厳実直なカトリック神父サンヒョンは、ただ人助けをしたいという願いから、アフリカで危険なワクチンの人体実験に志願する。 奇跡の生還を遂げ、ミイラのような姿で帰国した彼は“包帯の聖者”と呼ばれるが、肉体は日光を避け、血を求めるバンパイア(吸血鬼)と化していた。 ある日、幼馴染のガンウの妻、テジュと出会い、心をかき乱されてしまう…。 罪深き愛の物語。

カンヌ国際映画祭審査員賞、モントリオール・ファンタジア映画祭最優秀アジア映画ブロンズ賞、シッチェス・カタロニア国際映画祭主演女優賞
『渇き』象のロケット
『渇き』作品を観た感想TB

画像(C)2009 CJ ENTERTAINMENT INC., FOCUS FEATURES INTERNATIONAL & MOHO FILM. All rights reserved.

kawaki1.jpg【解説と感想】観る気にさせてくれるポスター。

カトリック神父であるサンヒョンは、死にゆく患者を看取ることに虚しさを感じ、アフリカの病院でワクチン開発の人体実験に身を投じる。生への執着がない彼のようなタイプが数多く希望者になっているらしい。多くの治験ボランティアと同じく、彼も死亡したと思われたが、奇跡的に復活する。

“包帯の聖者”と呼ばれ、救いを求めて大勢集まって来る信者の中に、幼なじみのガンウの母がいた。ガンウは病弱だが母親は頑丈で、日本でいえば呉服屋のような韓服店を切り盛りしている。 

kawaki2.jpgガンウの家で彼の妻テジュの人妻らしい色気を見せつけられ、サンヒョンは夜な夜な心をかき乱されるが、そこはカトリックの神父。ものさしのような棒で自らを叩き、欲望を抑えるのである(笑)。

そして、サンヒョンの身体には異変が起こっていた。 太陽の光を避け、人の生き血を飲まねば生きていけないヴァンパイアと化してしまったのだ。 人体実験のせいだと思われるが、理由はどうでもよい。とにかくなってしまったのだ!

それでも神父としての心を失わないサンヒョンは、病院で患者の血をちょっとだけ頂くに止める。(「トワイライト」といい、「ダレン・シャン」といい、友好的なヴァンパイアが増えた。)チューブで血をチューチュー吸う間抜けな顔には笑ってしまった。

サンヒョンのもう一つの悩みは下半身。ガンウの妻テジュはかなり積極的に迫って来る。及び腰のヴァンパイアが人妻に襲われる形で関係してしまうのだから、神父様、お気の毒。テジュを演じているキム・オクビンは少女のような愛くるしい顔立ちながら、脱ぎっぷりもよく、体もいい。実に官能的なシーンが繰り広げられる。
サンヒョン演じるソン・ガンホの方にも思いきったシーンが後であるのだが、韓国映画のこんな出し惜しみしない描き方は自然で好感が持てる。

kawaki3.jpgやがて、テジュもヴァンパイアとなるのだが、そのシーンはまるで血による愛の交歓である。ところがこの人妻、血を交換し合った神父とは大違いの道徳観の持ち主で、病人の血などマズイと言い放ち、情け容赦なく生きのいい血を求める。夢遊病と言う病気でしか胸の内を発散できなかった地味な主婦が、元気な男たちを殺してその血を飲むことで、魔性の女へと変貌してゆく。目が爛々と輝き美しさを増し、女という生き物の恐ろしさにのけぞってしまう。

テジュの夫ガンウは実にアホな男として描かれている。妻を下女のように扱う奴で、夫婦生活も正常ではないので間男されても同情を誘わない。末路は哀れだが、その後のダイナミックな妄想描写の中で、それまで目立たなかった夫は2人を追い詰めていく。

kawaki4.jpgヴァンパイアとして開き直るテジュの横で、サンヒョンは右往左往するばかり。良心など早く失ってしまった方が楽なのだ。彼は最後まで悩める神父であり続けた。だからこそ自分が聖者などではないことを、信者の前でショッキングな形で見せつける必要があったのである。“包帯の聖者”像は葬り去らなければならない。

もう一人の恐ろしい女はガンウの母親。最初はアクの強いおばちゃんだったのだが、体の自由が利かなくなってから俄然存在感を発揮する。ピクピク動く指と眼だけで演技するシーンは見事だ。

kawaki5.jpgソン・ガンホはポッチャリ3枚目のイメージがあるが、今回は10キロ減量して飢えたヴァンパイアに挑んだ。スラリとして今までで一番ハンサムに見えた。もう少し絞ったらシリアス調のヴァンパイアにもなれたかもしれない。真面目なセリフにもユーモアが漂い、笑いを取る意図も見える。妙におかしいのが素晴らしい。

サンヒョンは人妻との肉欲に溺れ、血をすする獣と化しても、最後まで人に救いの手を差し伸べる神父であった。どんなに罪を重ねても、全く矛盾していない。果たして、テジュに対しては、どういう救いの手を差し伸べて、どういう責任の取り方をするのか、是非見届けて欲しい。

kawaki6.jpgセットにはチープ感が漂う。ワイヤーアクションもお手軽で寂しいもの。しかし俳優陣の身体を張った頑張りで、狂気の世界が生まれた。ヴァンパイアよりお化けより神様よりも女が怖い…。お薦めの1本だ。
(象のロケット 映画・ビデオ部 並木)


 
posted by 象のロケット at 11:56| Comment(4) | TrackBack(12) | 超お薦め映画作品 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
>理由はどうでもよい。とにかくなってしまったのだ

全くその通りです。
EVと輸血とバンパイアの関係をあれこれ考えていたのは無駄でした。

とはいえ、あのフィリピン妻の行く末は心配です。
Posted by KGR at 2010年03月07日 21:07
KGRさん、確かにそうです。
フィリピン妻のトラウマたるや、相当なもんでしょうな。
何を言ってもきっと誰も信じない!
万が一、神父の行動を理解できたなら、
修道女になってしまったりして…。
Posted by 象のロケット at 2010年03月15日 11:58
こんにちは♪
TBありがとうございました。
こちらからもTBしましたが、、、
はじかれるようです。ということで、
コメントにて失礼致します。
インパクトのある作品でした。
パク・チャヌク監督の過去の作品、
「親切なクムジャさん」を鑑賞しましたが、
この作品以上に凄さがありました。
Posted by mezzotint at 2010年04月13日 16:22
象のロケットさん、はじめまして。
〜青いそよ風が吹く街角〜のBCと申します。いつもトラックバックありがとうございます。(*^-^*

確かに、ソン・ガンホは今までで一番ハンサムに見えましたね。^^
元々、ソン・ガンホは背が高く足も長いので
体型を引き締める痩せ方をすればいいのにという気もするけど
シリアスな中にもユーモアをもたせる為に
あえてこういう痩せ方にしたのかもしれないですね。

ワイヤーを使ったであろう鈍速のフライングは
シャープになりきれないサンヒョンを物語っているような気もしましたよ。(^-^ゞ
Posted by BC at 2010年04月15日 00:44
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