2013年10月29日

『燦燦 さんさん』お薦め映画

★★★★ 2013年製作 日 (81 min)
【監督】外山文治
【出演者】吉行和子、宝田明、山本學、田川可奈美、宮田道代、田内一子、都村敏子
【あらすじ】77歳の鶴本たゑは、夫を亡くしてからずっと一人暮らし。 老人クラブ「燦燦会」に気の合う仲間はいるものの、年寄りじみた活動は楽しめずウンザリしていた。 ある日、結婚相談所のショーウィンドーに飾られたウェディングドレスに目を奪われた彼女は、もう一度人生を輝かせようと“婚活”を始めることを決意する。 燦燦会の会長で、たゑの夫の親友だった森口は、そんな彼女を「いい年をして見苦しい!」と非難するのだが…。 コメディ。

『燦燦 さんさん』象のロケット
『燦燦 さんさん』作品を観た感想TB

画像(C)2013 埼玉県 / SKIPシティ 彩の国ビジュアルプラザ

sansan1.jpg 【解説と感想】本作の主人公は77歳の鶴本たゑ(吉行和子)。10年間介護した夫を見送った途端、彼女は毎日がつまらなくなってしまう。老人クラブの活動はあまりに年寄りじみているし、友達との当たり障りのない会話ばかりでは毎日が虚しい。別居している息子の家族は滅多にやって来ないし、電話をしてもうるさがられてしまう。これからずっと、ただお迎えが来るのを待っているだけの人生は嫌だと、彼女は結婚紹介所に入会する。

たゑの心境には、日本中の高齢者が共感できることだろう。私の周囲の老人たちの愚痴もだいたい似たようなものである。これまで忙し過ぎたり、辛い人生を送ってきた人も、束縛から解放され楽になった途端、急に寂しくなってしまうらしい。そして、最後は「やっぱり夫婦」なのだそうだ。いつも側にいて人生の苦楽を共にする同世代の“連れ合い”は心強い相棒であり、子や孫、親戚や友人とは全く違う存在なのだという。

ところで、個人差はあるが、ヒマだから、寂しいから、簡単に外出もできないからとテレビにかじりついていた老人たちも、大好きなテレビが理解できなくなってくる時期がやって来る。深遠で複雑な話は面倒くさいと好まれない。やはり「大岡越前」、「水戸黄門」、「暴れん坊将軍」は偉大な番組だったのだ。いまだに終了が悔やまれる。「あまちゃん」などの朝ドラも、毎日連続なら週一より前回のストーリーを忘れないし、15分なら集中力も持続できるし、高齢者には親切な放送形態なのかもしれない。

つまり、かなりの高齢者にでも理解されるようにするためには、ストーリーは単純明快な方がいい。テーマが身近で共感でき、起承転結がはっきりしていて分かりやすいもの。同世代の俳優が出ていて、応援したくなる内容。セリフにカタカナが少なくて、早口でないこと。セリフがはっきり聞き取れること。最後にハッピーな気持ちになれるもの。そんな作品なら喜んで見てもらえるのではないだろうか。

本作はまさにそんな、高齢者にも親切な作品である。おまけにいくつかの章に分かれていて、それぞれに題名がついているので、心の中である程度の準備をすることができる。上映時間も81分とコンパクトで、トイレが近い高齢者でも頑張ればなんとか途中で席を立たなくても済みそうな長さである。監督は33歳という大変若い方だが、高齢者に対する見識の高さが伺える。

sansan2.jpg 暗くなるので本作では簡単に触れてあるだけだが、実は、互いに子や孫、財産を持つ高齢者が婚活を始めると、相続問題、介護問題で揉めることもあるし、セクハラや詐欺の被害に遭うこともあるので注意が必要である。周囲がうるさいからと、籍を入れない同居婚を始めた老カップルが私の身内にもいた(幸か不幸か、その後うまくいかず簡単に別れてしまった)。高齢者の結婚には、周囲の理解とサポートが必要だろう。

sansan3.jpg 病院長役の宝田明(79)、見合い相手の一人を演じる山本學(76)は、シルバー世代の憧れの二枚目俳優たちだと思う。吉行和子は「人生、いろどり」も良かったし、本作そして「御手洗薫の愛と死」と、主演作が相次いでいる美人女優(78)だ。共演の老人たちは、彩の国さいたま芸術劇場の舞台監督でもある蜷川幸雄が率いる55歳以上の団員による演劇集団「さいたまゴールド・シアター」の団員たちだそうで、みな表情豊かで滑舌が良くセリフが聞き取りやすい。老いを自虐ネタで笑い飛ばしながら、一緒に怒り、もらい泣きし、ラストでは幸せな気持ちになれる物語だ。

sansan4.jpg 私自身もいつかは寂しい老人の仲間入りをする時期が来る。その時は私も是非婚活しようと心に決めた。きっとよりどりみどりで迷ってしまうに違いない。老後の新しい出会いが楽しみになってくるシルバー・ラブ・ストーリー。 高齢者はもちろん、おじいちゃん、おばあちゃんがいる若い方にも見て欲しいお薦め作品だ。

※11月16日公開の作品には、後期高齢者(75歳以上)が主人公の作品が勢揃いしている。認知症気味の母親との毎日をコミカルに描いた「ペコロスの母に会いに行く」、90歳を過ぎてから詩作を始めた柴田トヨの物語「くじけないで」、老いた彫刻家が若く美しいモデルに恋をする「ふたりのアトリエ ある彫刻家とモデル」。どれもおススメなので、シルバーデートにもぜひ活用して頂きたい。

(象のロケット 映画・ビデオ部 並木)




 
posted by 象のロケット at 18:52| Comment(0) | TrackBack(1) | 超お薦め映画作品 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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