2014年07月08日

『太秦ライムライト』お薦め映画

★★★★ 2013年製作 日・米 (104 min)
【監督】落合賢
【出演者】福本清三(オーズ・電王・オールライダー レッツゴー仮面ライダー)
山本千尋
本田博太郎(大帝の剣、北京原人 Who are you?、大怪獣東京に現わる、能登の花ヨメ)
松方弘樹、合田雅吏、萬田久子、小林稔侍
【あらすじ】かつて日本のハリウッドと呼ばれた京都・太秦。 70歳の香美山は、日映撮影所に所属する斬られ役一筋の大部屋俳優。 半世紀近く続いた人気テレビ時代劇が打ち切りとなり出番がない日が続く中、駆け出しの女優さつきに請われ、殺陣の指導をする師弟関係となる。 稽古の甲斐あって、時代劇でチャンスを掴んださつきは東京へ旅立った。 …時が経ち、さつきは太秦撮影所を訪れるが…。 ≪どこかで誰かが見ていてくれる…≫

『太秦ライムライト』象のロケット
『太秦ライムライト』作品を観た感想TB

画像(C)2013 UzumasaLimelight.

uzumasa1.JPG 【解説と感想】主演俳優は、斬られ役のアクション俳優として50年以上のキャリアを持つ“5万回斬られた男” 福本清三(71歳)で、本作が初主演。役柄はまるで彼自身のような、京都・太秦撮影所に所属する、斬られ役の老いた俳優・香美山清一。チャップリンの『ライムライト』をモチーフにした、ベテラン俳優と新進女優・伊賀さつき(山本千尋)の交流を描いた物語だ。

uzumasa2.jpg この香美山、毎日役作りのための稽古は欠かさない。謙虚で腰が低く、若手俳優に対する言葉遣いも丁寧。どんな仕事でも引き受ける。それが彼の処世術なのだろう。斬られ役の大御所的存在だが、どこから見ても、もうおじいちゃん。彼は満足に殺陣ができない若手に仕事を奪われていく。まだ見ていないが秋公開の、スーツアクター(ヒーローの着ぐるみ等を着て演技するアクション俳優)が主人公の「イン・ザ・ヒーロー」ともイメージが重なる。

uzumasa3.JPG 時代劇に欠かせないのが、クライマックスのチャンバラシーン。真剣(本物の刀剣)で本当に斬り合いをしているように見えると、観終わった後の満足感が違う。それを支えているのは殺陣(たて:立ち廻り)に長けた斬られ役だが、登場するのはほんのわずかなシーンなので、観客に顔を覚えられることはほとんどない。しかし撮影所のスタッフはみな、香美山がすごい役者であることを知っている。

uzumasa4.JPG 香美山と時代劇の大スター尾上清十郎(松方弘樹)が対峙する時、誰もが両者の立場を理解する。役者の輝きが違うのは、天性のスターオーラのせいばかりではなかった。ライムライト(照明)が当たるのは主役であり、斬られ役はあくまでも影の存在。斬られ役が主役より目立つのもご法度である。どんなに上手くても、香美山は斬り合いの主役にはなれないのだ。

古来の日本刀での斬り合いと、木刀を使う剣道は別物で、真剣に似せた刀で見栄えよく演技する時代劇の殺陣はもっと違う。本作にも登場するが、昨今はCGを使ったチャンバラも可能になった。歌舞伎の流れを汲む、情感漂う伝統的な時代劇には香美山のような斬られ役は欠かせないが、若手スターが活躍するスピーディーなアクション時代劇にはCGが欠かせない。どちらが優れているとも言えない時代になりつつある。

uzumasa5.jpg 物語を史実と照らし合わせる時代考証は大切だ。セットや道具はもちろん、衣装、話し言葉や表情、所作、思考回路までが昔と現代では違う。時代劇が減って、役者や技術スタッフが育つ場がなくなったと危惧されているが、最近ちょっぴり時代劇が復活してきているようにも感じる。若者の間でも、着物や浴衣が新しいファッションとして流行っているようだ。今の時代に即した新しい時代劇と伝統的な時代劇、私はどちらも楽しみたい。時代劇の巻き返しを強く望む。

香美山の「ヨッ、待ってました!」のアクションシーンは、「斬られて本望!」の一言に尽きる。撮影所で様々なスタッフと役者が作り上げる時代劇の舞台裏と、消えゆく老役者の美学を垣間見ることができるお薦め作品だ。

(象のロケット 映画・ビデオ部 並木)



 

posted by 象のロケット at 21:07| Comment(0) | TrackBack(4) | 超お薦め映画作品 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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