2017年05月27日

『光』お薦め映画

★★★★★ 2017年製作 日 (102 min)
【監督】河瀬直美(七夜待、2つ目の窓)
【出演者】
永瀬正敏(KANO 1931海の向こうの甲子園、スマグラー おまえの未来を運べ、誘拐、隠し剣 鬼の爪)
水崎綾女(ReLIFE リライフ、進撃の巨人 ATTACK ON TITAN エンド オブ ザ ワールド、進撃の巨人 ATTACK ON TITAN、BUNGO 〜ささやかな欲望〜 見つめられる淑女たち)
神野三鈴(日本のいちばん長い日)
小市慢太郎、早織、大塚千弘、大西信満
【あらすじ】ディスクライバー(音声ガイド原稿制作者)の尾崎美佐子は、視覚障害者向けの映画音声ガイドの仕事に携わることになった。 そこで視力を失いつつある弱視の天才カメラマン中森雅哉と出会う。 表現に細かく注文を付ける雅哉に反発する美佐子だったが、彼が過去に撮影した写真を見て心を動かされる。 しかし音声ガイドの方は、何度書き直しても皆が納得するものができないのだった…。 ラブ・ストーリー。

『光』象のロケット
『光』作品を観た感想TB

画像Copyright:(C)2017 “RADIANCE” FILM PARTNERS/KINOSHITA、COMME DES CINEMAS、KUMIE

hikari1.jpg 【解説と感想】例えば駅の中を歩く人の中で、一目で身体障害者と分かるのは、足の不自由な人と目の不自由な人だ。なぜなら、車椅子や松葉づえ、白い杖は目立つから。耳の聞こえない人、声が出せない人、内臓疾患を抱える人は、見た目からはわからない。見た目で分かる障害者と分からない障害者には、どちらにも犯罪や事故に遭う危険がある。東京オリンピックへ向けて工事中の駅が多いが、まだまだバリアフリーにはほど遠い世の中だ。今回の作品には、目が見えない人も映画を楽しめる「音声ガイド付きバリアフリー上映」に携わる人々が登場する。

本作の主人公は、かつては天才カメラマンとして知られた存在だった中森雅哉(永瀬正敏)。彼は急激に視力が低下していて、完全に見えなくなる日がもうそこまで来ている。声が出ない歌手、音が聞こえないオーケストラ指揮者、足が不自由なサッカー選手と同じく、その苦悩たるや絶望に近いものがあるだろう。撮影への意欲と執着を捨てきれないでいる彼は、片時もカメラを手放すことができない。

hikari2.jpg 他の視覚障害者と共にバリアフリー映画のアドバイスもしている雅哉は、ディスクライバー(音声ガイド原稿制作者)の尾崎美佐子(水崎綾女)と出会う。彼女は精一杯頑張っているのだが、いかんせん未熟さが目立つ。それは仕事の経験というより、若くて人生経験が足りないせいだと言えるだろう。音声ガイドを利用する人の立場になって原稿を書くことが、まだ出来ずにいるのだ。そこを痛いほど的確に突いてくる雅哉の意見は辛辣で、美佐子を苛立たせる。

外国映画が日本で上映される場合、吹替とは別に、台詞が日本語になっただけの字幕スーパーがあるが、それとは別に、もっと分かりやすく細かい配慮がなされた難聴者向けの字幕がある。そして、視覚障害者向けには、音声ガイドというものがある。本作は、あまり知られていない音声ガイドの仕事が良く分かる内容になっていて、視覚障害者の手助けになりながらも邪魔をしない程度の音声原稿に仕上げるまでの過程が、丁寧に描かれている。美佐子自身が、担当する映画作品、そして目が見えない人のことを本当の意味で理解していなければ、映画製作者と視覚障害者が満足するような音声原稿は作れない。試写シーンで披露される、美佐子を悩ませた場面の最終稿は感動的で、映画と劇中劇がピタリと重なって見えた。

hikari3.jpg 雅哉を演じる俳優・永瀬正敏の演技が素晴らしい。彼は写真家としても活動しており、プライドが高い天才カメラマンのアーティスト・オーラを醸し出している。渋さとカッコよさが混在していて、美佐子が惹かれていくのも納得だ。一見、似合わない2人が近づいていく過程といい、全体が自然な流れで割とゆったりした印象なのに102分という尺なのは、ストーリーがシンプルだからだろう。暗闇の世界に向かいつつある男のラブ・ストーリー。お薦め作品だ。

(象のロケット 映画・ビデオ部 並木)


 
posted by 象のロケット at 10:11| Comment(0) | TrackBack(3) | 超お薦め映画作品 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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[映画『光』を観た]
Excerpt: ☆・・・よい映画でした。 河瀬監督の作品は、そのドキュメントタッチの中での物語構築、人物アップ多様による役者の内面の演技誘発と、いつも、私は感心させられている。 ・・・主人公・美佐子は、視覚障碍者への..
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