2018年01月23日

『シェイプ・オブ・ウォーター』お薦め映画

★★★★★ 2017年製作 米 (124 min)
【監督】ギレルモ・デル・トロ(パシフィック・リム、ヘルボーイ ゴールデン・アーミー、ヘルボーイ、パンズ・ラビリンス)
【出演者】
サリー・ホーキンス(しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス、パディントン2、ブルージャスミン、デザート・フラワー)
マイケル・シャノン(テイク・シェルター、ノクターナル・アニマルズ、THE ICEMAN 氷の処刑人、ドリーム ホーム 99%を操る男たち)
リチャード・ジェンキンス(扉をたたく人、ハンナとその姉妹、モールス、アウトロー)
ダグ・ジョーンズ、マイケル・スタールバーグ、オクタヴィア・スペンサー
【あらすじ】冷戦時代の1962年、アメリカ。 声が出せない女性イライザは、政府の極秘研究所の清掃員。 清掃中、彼女はアマゾンの奥地で神のように崇められていたという不思議な生き物を見て、心を奪われる。 密かに“彼”と交流を深めたイライザは、実験室で虐待されている“彼”を何とか助けようとするが…。 ラブ・ファンタジー。 
ベネチア国際映画祭金獅子賞

『シェイプ・オブ・ウォーター』象のロケット
『シェイプ・オブ・ウォーター』作品を観た感想TB

画像Copyright:(C)2017 Twentieth Century Fox Film Corporation All rights reserved.

shape1.jpg 【解説と感想】自分と全然違うタイプの人間は大変新鮮に映るから、興味を持って接しているうちに、友情→恋愛→結婚へと進んでしまうことがある。結婚後トラブルが発生しても、「自分とは世界が違う人だから」と、案外許せてしまう(我慢できず→離婚となる場合もあるが…)。現実的な話だと、昔なら身分違いの恋、現代なら国際結婚などがそうだ。物語の中だと、古くは神様、妖怪、動物などとの異類婚。近年なら宇宙人や吸血鬼、超能力者との恋愛だろうか。ああ、魅力的な異星人と結婚したい!

shape2.jpg 本作の主人公は、アメリカ政府の機密研究所の女性清掃員イライザ(サリー・ホーキンス)。孤児で声が出せない彼女は、職場と家を往復するだけの地味で慎ましい毎日を送っている。友人は面倒見のいい同僚女性ゼルダ(オクタヴィア・スペンサー)と、隣のお人好しの老画家ジャイルズ(リチャード・ジェンキンス)だけ。少々不便で寂しいが、不幸ではない。

ある日、ホフステラ―博士(マイケル・スタールバーグ)が運び込んだ不思議な生き物が、研究所のボスであるストリックランド(マイケル・シャノン)に虐待され、ボスに逆襲した。血に染まった部屋の清掃を任されたイライザは、生き物の“彼”(ダグ・ジョーンズ)を見て心を奪われる。ゆで卵で気を惹くうちは単なる餌付けかと思っていたが、同情→友情→恋への進展は早かった!

shape3.jpg “彼”は、アマゾンの奥地では神のように崇められている存在なのだという。目がギョロリと大きく、全身に鱗がある人魚のような二本足の男。奇妙だがグロテスクではなく、ETのような愛嬌があり、ガッシリとした体格で頼りがいがある。衣装もすごいが、メーキャップには2時間から4時間かかったというから、ダグ・ジョーンズの素顔は全く分からない。人間の言葉は話せないものの“彼”には感情と知性があり、不思議な能力を持っている。イライザと“彼”は言葉ではなく、心と心で通じ合っていく。そして驚くことに、関係は更に進展するのだ! エェ〜! と驚かされるが、この2人なら…許せる。

時代は冷戦期。“彼”もアメリカとロシアの威信をかけた戦争に巻き込まれてしまう。人魚男と人間女性の恋というだけで十分ハードルが高いのに、ボスからも国家からも狙われる2人。しかし、きな臭い現実を前にしても、イライザと“彼”は(それどころではないのに)夢の世界に浸りきっている。果たして彼らの命と恋の行方は…?

shape4.jpg 失礼ながらそんなに若くない(41歳)サリー・ホーキンスが、本作では恋して夢見る乙女になりきっている。女性が恋をして、強く美しくなっていく様子は、見ていていいものである。水中でのツーショットは幻想的だ。彼女は3月の同時期に公開となる「しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス」でも、地味だが恋に積極的な女性主人公を演じている。どちらも甲乙つけがたいほどの名演で、不思議な魅力のある女優だなと思う。孤独な女と神様かもしれない男のユニークな異類恋愛譚。お薦め作品だ。

(象のロケット 映画・ビデオ部 並木)

 
 
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2018年01月22日

『スリー・ビルボード』お薦め映画

★★★★★ 2017年製作 英・米 (116 min)
【監督】マーティン・マクドナー(セブン・サイコパス)
【出演者】
フランシス・マクドーマンド(スタンドアップ、バーバー、容疑者、バーン・アフター・リーディング)
ウディ・ハレルソン(ラリー・フリント、ゾンビランド、ナチュラル・ボーン・キラーズ、猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー))
サム・ロックウェル(ウェルカム トゥ コリンウッド、月に囚われた男、コンフェッション、マッチスティック・メン
アビー・コーニッシュ、ジョン・ホークス、ピーター・ディンクレイジ
【あらすじ】アメリカ・ミズーリ州の田舎町エビング。 さびれた道路沿いの広告看板に、地元警察の署長ウィルビーを批判するメッセージが表示される。 それは、7ヶ月前に娘を殺された母親ミルドレッドが、進展しない捜査に腹を立てて出した広告だった。 人望あるウィルビーを攻撃したことで、ミルドレッドは非難を浴びることに…。 クライム・サスペンス。
トロント国際映画祭観客賞、ベネチア国際映画祭脚本賞

『スリー・ビルボード』象のロケット
『スリー・ビルボード』作品を観た感想TB

画像Copyright:(C)2017 Twentieth Century Fox Film Corporation All rights reserved.

three1.jpg 【解説と感想】ひったくり、盗撮、ストーカー、レイプ、拉致監禁、殺害、人身売買…等、女性は常に犯罪の被害者になる危険にさらされている。しかし、露出の多い服を着るな、夜遅くまで出歩くな、男性と2人きりになるな、という親の注意を聞き入れる若い女性がどれほどいるだろうか。

さて、本作の主人公は、中年女性ミルドレッド(フランシス・マクドーマンド)。彼女の娘は7か月前、夜道でレイプされた挙句に殺害された。犯人はまだ見つからない。業を煮やした彼女はなけなしの金で広告会社と契約し、道路沿いの広告看板に「レイプされて死亡」「なぜ? ウィロビー署長」「犯人逮捕はまだ?」という思い切ったメッセージを掲示する。

three2.jpg 本来なら世間の同情を一身に集めるはずのミルドレッドという女性、全く可哀想に見えない。女らしさも愛想もなく、毒舌家でケンカっ早く、見た目も凶暴な中年オヤジのよう(戦闘鉢巻のようなバンダナはイカしてるが)。一方、彼女が批判した地元の警察署長ウィロビー(ウディ・ハレルソン)は住民や部下から敬愛されており、町の誰もが彼女に広告を止めさせようと働きかける。

3枚の屋外広告(スリー・ビルボード)によって、ミルドレッドの立場は被害者の母親から、乱暴者の加害者へとすり替わってしまう。作品中では、この「見方が変わる」というポイントが随所に現れていて、先が読めない面白さがある。

three3.jpg ミルドレッドの行動はエスカレートしていき、もはやテロ。だんだん同情できなくなっていく。意外なことに、彼女の胸の内を一番理解しているのは、大迷惑を被った被害者(?)の署長ウィロビーなのだ。彼だって捜査を怠っていたわけではない。ただし、彼の部下ディクソン(サム・ロックウェル)は怒りが収まらず、ミルドレッドの天敵と化す!

物語は早く犯人を逮捕しろと急かす広告から始まる。しかし、警察批判、人種差別、村八分、家庭不和、不治の病、暴力事件など、魅力的な回り道がいっぱいあって、なかなか犯人探しが進まない。果たして事件は解決するのか?

three4.jpg 警察が真剣に捜査しても、家族がビラ配りをしても、マスコミが繰り返し報じても、懸賞金があっても、迷宮入りしてしまう事件は多々あり、被害者家族は、無念の思いをどこにもぶつけられずにいる。前へ進めない人もいるだろう。普通、ミルドレッドのような行動を起こす者はいないのだ。本作のテーマは重いし、署長の行動も重い。だが、作品全体がブラックな笑いに包まれている。ぶっ飛んだ事件が次から次へと発生し、毒舌合戦にはキレがあり、悲しい場面でもしんみりさせてくれない。これはいったい、どういったジャンルの作品なのかと観客を迷わせる。

ところが、私たちが予想だにしない結末が待っている。本作がどんな作品なのかは、最後まで見なければわからない。西部劇の一匹狼のような風貌の母親を演じるフランシス・マクドーマンド、物わかりのいい人情派の署長役のウディ・ハレルソン、浅はかな白人警官役のサム・ロックウェル、彼らの見事な演技に圧倒され引き込まれる、シリアスでユーモアたっぷりのクライム・サスペンス。お薦め作品だ。

(象のロケット 映画・ビデオ部 並木)

 
 
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2018年01月07日

『悪と仮面のルール』お薦め映画

★★★★ 2017年製作 日 (138 min)
【監督】中村哲平
【出演者】
玉木宏(雨鱒の川 ファースト・ラブ、のだめカンタービレ 最終楽章、MW -ムウ-、真夏のオリオン)
新木優子(僕らのごはんは明日で待ってる、ゆるせない、逢いたい)
吉沢亮(リバーズ・エッジ、レオン、斉木楠雄のΨ難、仮面ライダー×仮面ライダー MOVIE大戦 アルティメイタム)
中村達也、光石研、村井國夫、柄本明

【あらすじ】資産家の息子・久喜文宏は11歳の時、自分が「この世に悪の心“邪”を残すために生まれ育てられた」のだと父から告げられ、養女・香織と引き合わされる。 文宏と香織は惹かれ合うが、14歳の時に文宏は父を殺害した。 …大人になった文宏は整形手術で顔を変え、“新谷弘一”として香織に近づく。 そんな文宏に、謎の男たちが接触してきた…。 サスペンス。
原作:中村文則 主題歌:Uru『追憶のふたり』

『悪と仮面のルール』象のロケット
『悪と仮面のルール』作品を観た感想TB

画像Copyright:(C)中村文則/講談社(c)2017「悪と仮面のルール」製作委員会

akurule1.jpg 【解説と感想】育児放棄や監禁、虐待、万引き等の犯罪指示や売春強要など、我が子に対して信じられないようなことをする親がいる。幼い子は大人に頼らなければ生きていけない。自分が虐待されていることに気づかない子どももいるらしい。子どもは育て方次第というが、環境に関係なく優秀な子と落ちこぼれがおり、グレる子とグレない子がいて、優しい子と冷たい子がいる。子どもは親の影響をどのくらい受けるのだろう? どれくらい親の思い通りになるのだろう?

akurule2.jpg 本作の主人公・久喜文宏(玉木宏)は、財閥の末っ子として生まれた。父(村井國夫)はこの世に「悪の心(邪)」を残すために彼を作ったのだという。心情的なことは複雑で少し分かりにくいが、金銭的にだと分かりやすい。影の存在である代々の“邪”の働きによって久喜家は発展してきた。父も“邪”であり、父の異常な計画を知った少年・文宏は父を殺害する。その時、父は息子に“邪”のバトンタッチをしたつもりだったのかもしれない。

映画は、そんな文宏が大人になり、金で“新谷弘一”という男の身分と顔を手に入れ、新谷に成りすますところから始まる。整形した顔の違和感を体感しようと、玉木宏は顔に鍼を50本打ったのだという。整った顔がこわばって見えたのは細かく計算された演技+鍼のせいだったのだ。声も渋いし、身のこなしも落ち着いていて、クールで繊細な殺人者役にピタリとはまっている。

akurule4.jpg 彼は数年間共に育った久喜家の養女・香織(新木優子)を守ろうとして、再び殺人を犯す。香織への恋心は少年のように初々しい。文宏と香織の無味乾燥な今の生活を支えているのは、思春期の幸福体験だけなのだ。2人が車の中で会話するシーンは切ない。香織は“邪”の対極にあるような性格で、美しく可憐。私も見とれてしまった!

重要な役どころの青年・伊藤を演じる吉沢亮は、近ごろ映画出演が相次いでいる若手俳優。『リバーズ・エッジ』の演技も印象的だった。次なるスターだろう。
akurule3.jpg 探偵・榊原役の光石研は、見ない日はないほど映画やテレビに出ているベテラン俳優。さすがです、としか言いようがない。刑事役の柄本明は、邪魔で嫌〜な人物を引き受けている。父役の村井國夫は、“邪”の力と重苦しさ、権力、老いを一瞬で感じさせた。文宏の兄役の中村達也は、父親の影と底知れぬ不気味さを漂わせる。つまりどの役者も存在感と個性を放ち、輝いている。役者陣もすごいが、彼らを指揮した中村哲平監督もすごいと思った。原作のイメージを生かしながら圧縮した脚本の流れにも好感が持てる。

さて、タイトルにあるように、文宏は彼なりのルールで仮面を被り、悪に手を染めた。確かに殺人者になったが、彼は父や兄の望み通り“邪”になったのだろうか? 文宏と香織はどうなるのか? 既に若手イケメン俳優を卒業した玉木宏が、新しい顔を見せてくれるサスペンス・スリラー&ラブ・ストーリー。お薦め作品だ。

(象のロケット 映画・ビデオ部 並木)

 
 
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2017年10月25日

『ブレードランナー 2049』お薦め映画

★★★★★ 2017年製作 英・米・カナダ (163 min)
【監督】ドゥニ・ヴィルヌーヴ(プリズナーズ、ボーダーライン、渦、複製された男)
【出演者】
ライアン・ゴズリング(ラ・ラ・ランド、ラースとその彼女、ブルーバレンタイン、スーパー・チューズデー 正義を売った日)
ハリソン・フォード(インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説、レイダース 失われたアーク<聖櫃>、ブレードランナー、インディ・ジョーンズ 最後の聖戦)
アナ・デ・アルマス(スクランブル、ノック・ノック)
シルヴィア・フークス、ロビン・ライト、マッケンジー・デイヴィス、カーラ・ジュリ
【あらすじ】人間と人造人間レプリカントの闘いから30年後の2049年。 レプリカントの製造元タイレル社を買い取ったウォレスは、従順な新型レプリカントの製造を開始した。 旧型で寿命制限のないネクサス8型の残党を追跡し“解任”している捜査官ブレードランナーのKは、ある事件をきっかけに、30年間行方不明となっている元捜査官デッカードを探し始める…。 SFサスペンスアクション

『ブレードランナー 2049』象のロケット
『ブレードランナー 2049』作品を観た感想TB

画像Copyright:(C)2017 Sony Pictures Digital Productions Inc. All rights reserved.

blader1.jpg 【解説と感想】1983年公開の前作「ブレードランナー」から実に35年も経った2017年、新作「ブレードランナー2049」が製作された。時代設定も、前作が2019年で新作は2049年と、30年が経過している。今回の主人公は新ブレードランナーのK(ライアン・ゴズリング)だが、前ブレードランナーのデッカード(ハリソン・フォード)の存在感は別格。「インディ・ジョーンズ」でも「スターウォーズ」でも、観客は前作から経過した長い年月を彼と共有しているような気がしてくる。ハリソン・フォードは幸せな俳優だ。

blader2.jpg 多少、画面は明るいが、前作を踏襲する世界観の構築は見事で、同じ監督なのかと思ってしまうほどである。かなりのプレッシャーを感じながら、注意深く製作されたに違いない。陰鬱な街の中で、誰が人間で誰がレプリカント(アンドロイド・人造人間)なのか、パッと見はよく分からない。ブレードランナーKは、旧型で寿命制限のないネクサス8型の残党を追跡し“解任”=抹殺している。旧型レプリカントは凶暴には見えないけれど、存在すること自体が許されないのだ。そして、Kは驚愕の出来事に遭遇する。

blader3.jpg 冷静沈着ポーカーフェイスのKはスゴ腕で職務に忠実。プライベートでは恋人を大事にしていて、家の中では表情が和らいでいる。とはいえ、Kの恋人ジョイは、ちょっと普通と違う女なのだ。色っぽい場面もある。既に“こんな彼女”との幸せな同棲生活を送っている人もいるだろうが、“こんな家庭生活”が主流にならないことを願うのみである。



blader5.jpg 長年、ひょっとしたらデッカードはレプリカントではないかとの論議がなされてきたらしいが、本作では特に言及されない。Kも謎の男で、彼自身も自分の出自をよく分かっていない。デッカードの空白の30年と、Kの正体、その他の謎が次第に明らかになっていく。



blader4.jpg 163分という長尺だが、ストーリーは練られていて飽きさせない。人間の都合で理不尽に使い捨てされてきたレプリカントが、新たな一面と動きを見せてくれる。予想を覆す展開で、激しいアクションや一風変わったラブシーンも楽しめ、登場人物の繊細な“心”が伝わってくる。私自身は、ラストに何とも言えない切なさを感じ、もうこれだけで満足できた。この数秒間の哀愁を感じるために、163分の長さが必要だったのだと思えるほどだ。SF映画の金字塔と讃えられる前作に続き、本作もまた美しい傑作である。お薦め作品だ。

(象のロケット 映画・ビデオ部 並木)

 
 
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2017年10月05日

『斉木楠雄のΨ難』お薦め映画

★★★★ 2017年製作 日 (97 min)
【監督】福田雄一(銀魂、コドモ警察、大洗にも星はふるなり、俺はまだ本気出してないだけ)
【出演者】
山崎賢人(氷菓、ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章、アナザー Another、オオカミ少女と黒王子)
橋本環奈(セーラー服と機関銃 -卒業-、銀魂、ハルチカ、映画 暗殺教室)
新井浩文(奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール、百円の恋、青い春、血と骨)
吉沢亮、笠原秀幸、賀来賢人、ムロツヨシ
【あらすじ】生まれつきとんでもない超能力者である高校生・斉木楠雄(さいきくすお)。 普通の生活を送りたい彼は、誰にもその能力を知られないよう、超能力を使って平凡な高校生のフリをしていた。 文化祭も目立たず静かにやり過ごしたいと願っていたが、個性的なクラスメイトたちのせいで災難続きに…。 人気コミック実写劇場版。 ≪やれやれ、たかが文化祭で、地球滅亡の危機とはな。≫
原作:麻生周一

『斉木楠雄のΨ難』象のロケット
『斉木楠雄のΨ難』作品を観た感想TB

画像Copyright:(C)麻生周一/集英社・2017映画「斉木楠雄のΨ難」製作委員会

sainan1.jpg 【解説と感想】各種才能、身体能力、美貌、その他で、凡人とは比較にならないほど抜きん出ている人を、私たちは称賛し尊敬や憧れの気持ちを抱く。しかし「次元が違う」演技でオリンピック金メダルを獲得したフィギュアスケートの羽生結弦選手が、もし50回転ジャンプに成功したら、観客は誰一人拍手せず凍り付き、スケートリンクが静まり返ることだろう。神技にも限度というものがある。

sainan2.jpg 本作の主人公・斉木楠雄サイキクスオ(山崎賢人)は、様々な超能力を持っている高校生。だが、目立たず普通の生活をしたい彼は、自らの能力を使って敢えて平凡な高校生のフリをしている。超能力者集団の「X-MEN」や、先日公開された、生死を繰り返す「亜人」のように、バレたら迫害される恐れがあるから当然だろう。だが残念ながら、どんな超能力を使っても斉木楠雄は普通の高校生にはなれない。「持っている男」はつらいよ、だ。

sainan3.jpg 彼の周囲は個性派揃い。自他共に認める学園一の美少女・照橋心美テルハシココミ(橋本環奈)、オッサンじみたバカ・燃堂力ネンドウリキ(新井浩文)、中二病の妄想美少年・海藤瞬カイトウシュン(吉沢亮)、暑苦しい熱血委員長・灰炉杵志ハイロキネシ(笠原秀幸)、元暴走族総長の過去をひた隠す窪谷須亜蓮クボヤスアレン(賀来賢人)、イリュージョニスト蝶野雨緑チョウノウリョク(ムロツヨシ)、エロ校長・神田品介カンダビンスケ(佐藤二朗)、息子の超能力に鈍感な両親(田辺誠一・内田有紀)等、世話の焼ける困った奴ばかり。彼らをピンチから救おうとすると、超能力使いっぱなしになってしまう。ポーカーフェイスのようで斉木楠雄、かなりお人好しなのである。

斉木楠雄を演じている山崎賢人はコミックの実写劇場版に多数出演しているが、私は本作が今までで一番彼に合っているんじゃないかと思った。顔立ちと体型も高校生として違和感はない。どピンクの髪も頭に差しているペロペロキャンディーのようなアンテナも似合っている。フテ腐れて冷めきった表情が笑わせる。

照橋心美の勘違い美少女ぶりもすごい。自意識過剰なモテ女は決してへこたれない! そして私が一番ウケたのは、斉木楠雄とは対照的な熱血漢・灰炉杵志。ド根性男は決してへこたれない! 両者とも素晴らしかった!

sainan4.jpg 何せ福田雄一監督作品である。誰もが笑いを求めて劇場へ行くことだろう。結果は、期待を裏切らずギャグ感満載! 30代40代が高校生を演じていても気にならない。誰もが役に成り切っている。あり得ないキャラクターとストーリーだが、バカバカしいとは感じずガッツリ笑えた。超能力少年のΨ難(サイナン)続きの文化祭当日を描く、SF青春ギャグ・コメディ。お薦め作品だ。

(象のロケット 映画・ビデオ部 並木)

 
 
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