2018年10月04日

『スカイライン -奪還-』お薦め映画

★★★★ 2017年製作 英・中・カナダ・インドネシア・シンガポール・米 (106 min)
【監督】 リアム・オドネル
【出演者】
フランク・グリロ(パージ:大統領令、パージ:アナーキー、THE GREY (ザ・グレイ)、エンド・オブ・ウォッチ)
ボヤナ・ノヴァコヴィッチ(デビル、アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル)
ジョニー・ウエストン(マーヴェリックス 波に魅せられた男たち、WE ARE YOUR FRIENDS、96時間/レクイエム)
イコ・ウワイス、ヤヤン・ルヒアン
【あらすじ】 ロサンゼルス警察の刑事マークは、息子トレントを追い宇宙船に吸い込まれる。 そこでマークを助けたのは、人間の心を残したままエイリアンになった男ジャロッドだった。 内戦が続くラオスに墜落した宇宙船から、生まれたばかりのジャロッドの娘と共に脱出したマークは、反政府組織リーダーの男スアのアジトに身を寄せる…。 SFアクション第2弾。

『スカイライン -奪還-』象のロケット
『スカイライン -奪還-』作品を観た感想TB

画像Copyright:(C)2016 DON'T LOOK UP SINGAPORE, PTE. LTD. All rights reserved.

bskyline1.jpg 【解説と感想】 映画の続編は、前作の内容を忘れた頃にやって来る! だが、観客は前作で抱いたおぼろげなイメージを頼りに劇場へ行く。2作目のハードルは高い。2作目で打ち切りになるか、3作目、4作目が作られるかは2作目の内容と評判次第だ。弊社はユーザーに極度の先入観を与えないため、「ネタバレなし」に加え「悪口なし」をモットーとしている。「面白かった」というコメントはほぼ信用されないが、「つまらなかった」という感想は結構信用する人がいるからだ。しかし、もう公開から7年も経っているのだから時効だろう。正直言って、1作目「征服」はつまらなかった。ところが、2作目の本作「奪還」はとっても面白かったのだ! 私は終了後に思わず拍手したくなった!

bskyline2.jpg本作「奪還」の主人公・刑事マークを演じているのは、こちらもスマッシュヒットしたアメリカのサスペンス・ホラー映画「パージ」シリーズの「パージ:アナーキー」「パージ 大統領令」で主演(警官役)したフランク・グリロ。リーアム・ニーソンをちょっぴり若くしたような、正義感あふれる強くて頼れるオッサンだ。マークの息子トレント(ジョニー・ウェストン)と、なぜか美人で腕っぷしも強い地下鉄運転手オードリー(ボヤナ・ノヴァコヴィッチ)が吸い込まれた宇宙船は、どういうわけかラオスに不時着し、彼らはそこで反政府組織のボス、スア(イコ・ウワイス)らと遭遇する。イコ・ウワイスは、2011年製作のインドネシア・アクション映画「ザ・レイド」「ザ・レイド GOKUDO」で主演(警官役)し、華麗な伝統武術シラットを披露し人気となった。同じくこの2作品に出演しているアクション俳優ヤヤン・ルヒアンも登場し、2人は得意の格闘技を駆使してエイリアンと戦う。

bskyline3.jpg 「パージ」と「ザ・レイド」のシリーズそれぞれの役柄と本作のキャラが被っているのが、逆に面白くて笑ってしまう。前作に漂っていた「どこかで見た」感を更に押し出しているのに、全く「あざとさ」を感じさせない。面白いからいいじゃないのと納得してしまう。前作では「強い軍隊」も役に立たず、人類は「征服」されるがままで救いがなかった。しかし、本作では、一般人がエイリアンに「反撃」を開始し、地球「奪還」を目指す。不思議な青い光を放つ宇宙船や、不気味に強いエイリアンの最新VFX映像も見事で、視覚的にも満足できる。アメリカ映画では何かというとすぐ拳銃や軍隊が出てくるが、一般男女が銃だけでなく短剣や素手でも果敢に応戦する姿は見ていて気持ちがいいし、応援したくなる。

bskyline4.jpg さて、3作目への意欲もありありな終わり方で、ここまでくれば次はターミネーターやミュータントが登場しても決して驚かない。どう転がっていくかが今から楽しみな、こだわりのB級SFアクション。お薦め作品だ。

(象のロケット 映画・ビデオ部 並木)

 
 
posted by 象のロケット at 14:38| 超お薦め映画作品 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年09月13日

『プーと大人になった僕』お薦め映画

★★★★ 2018年製作 米 (110 min)
【監督】 マーク・フォースター(007/慰めの報酬、主人公は僕だった、ネバーランド、ステイ)
【出演者】
ユアン・マクレガー(トレインスポッティング、アイランド、スター・ウォーズ エピソード2 クローンの攻撃、ベルベット・ゴールドマイン)
ヘイリー・アトウェル(ウディ・アレンの夢と犯罪、キャプテン・アメリカ ザ・ファースト・アベンジャー、ある公爵夫人の生涯、キャプテン・アメリカ ウインター・ソルジャー)
マーク・ゲイティス(SHERLOCK シャーロック 忌まわしき花嫁)
オリヴァー・フォード・デイヴィス、ブロンテ・カーマイケル、(声)ジム・カミングス、ブラッド・ギャレッド、他
【あらすじ】 イギリス・ロンドン。 大人になったクリストファー・ロビンは会社で管理職となり、妻イヴリンや娘マデリンと休日を過ごす時間もないほど多忙な毎日を送っていた。 仕事にも家族との関係にも悩むロビンが公園のベンチで頭を抱えていると、自分を呼ぶ聞き覚えのある声がする。 振り向くとそこには、かつての親友くまのプーがいた…。 ファンタジック・コメディ。 ≪それは風船より大切?≫

『プーと大人になった僕』象のロケット
『プーと大人になった僕』作品を観た感想TB

画像Copyright:(C)2018 Disney Enterprises, Inc. All rights reserved.

pooh1.jpg 【解説と感想】 イギリスの作家アラン・アレクサンダー・ミルン(1882〜1956:スコットランド人)が1926年以降に出版(挿絵は画家アーネスト・ハワード・シェパード(1879〜1976)が担当)した『くまのプーさん』シリーズは、今も世界中の子どもたちに読まれている人気児童文学だ。「100エーカーの森」で、幼い男の子クリストファー・ロビンは、はちみつが大好きなクマのプー、森一番の物知りフクロウのオウル、ネクラなロバのイーヨー、怖がり屋の子豚ピグレット、優しいカンガルーのママ・カンガと子どものルー、やんちゃなトラのティガー、お利口さんのウサギのラビットらと友達になり、毎日「なにもしない」で楽しく遊ぶ日々を送っていた。しかし、男の子は学校へ行く年齢となり、森の仲間たちとお別れする日がやって来る…。

本作は、少年が仲間と別れ、長い時間が経った後から始まる。大人になったクリストファー・ロビン(ユアン・マクレガー、日本語版吹替:堺雅人)は現在、イギリスの首都ロンドンで中間管理職として、多忙な毎日を送っている会社員。美しい妻イヴリン(ヘイリー・アトウェル)、幼い娘マデリン(ブロンテ・カーマイケル)とゆっくり話したり、ご近所付き合いをする時間もない。

pooh2.jpg もうすぐ親元を離れ寄宿学校へ進学する娘と一緒に過ごす最後の夏だというのに、彼は週末に別荘へ行く約束より仕事を優先し、家庭内はギクシャクしてしまう。そんな彼の前に、突然プーが現れた! プーは別れた時のまんまで、相変わらず「ねえ、一緒に遊ぼう。」と、のんきに誘ってくる。今の彼には、プーなんかに構っているヒマはない。世話の焼けるプーを100エーカーの森まで送り届けても、彼は仕事の書類が入ったカバンを決して手放さない。プーは訳が分からず「仕事って、赤い風船より大事なの?」 とつぶやく。愛想のないつまらん男になったクリストファー・ロビンを見ているうちに、悲しくて涙が出てきた。自分も彼と同じではないかと。

娘マデリンは物分かりがいいが、本当はパパと一緒に遊びたいはず。仕事人間のクリストファー・ロビンも、かつては子どもだった。元気に森を駆けまわり、プーと同じ目線で物事を考えていた。でも、そんなことはすっかり忘れてしまっている。今の彼には守るべき妻子があり、そのためにも仕事で結果を出すことが求められているのだ。妻子には多少我慢してもらわなければならない。わかっちゃいるけど、愛しているけど、妻や子どもを構っている時間がない! 働き盛りって、辛い。そんなパパの複雑な愛は、家族になかなか伝わらないのである。

pooh3.jpg 本作は実写版。100エーカーの森はのどかで美しく、森の仲間たちも、絵本やアニメの世界から抜け出したようなぬいぐるみのモフモフ感で、森にもロンドンの街にも溶け込んでいる。娘マデリンと森の仲間たちが、大好きなパパ、クリストファー・ロビンのために奔走する、ほのぼのとしたストーリーだ。

お父さん方は多少ほろ苦い思いをされるかもしれない。
男女問わず忙しさに紛れ忘れていたことを思い出させてくれるファンタジック・コメディ。お薦め作品だ。

(象のロケット 映画・ビデオ部 並木)

 
 
posted by 象のロケット at 11:53| 超お薦め映画作品 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『響 HIBIKI』お薦め映画

★★★★ 2018年製作 日 (106 min)
【監督】月川翔(センセイ君主、君の膵臓をたべたい、となりの怪物くん、黒崎くんの言いなりになんてならない)
【出演者】
平手友梨奈
北川景子(スマホを落としただけなのに、Dear Friends ディア フレンズ、パンク侍、斬られて候、花のあと)
アヤカ・ウィルソン(パコと魔法の絵本)
高嶋政伸、柳楽優弥、北村有起哉、野間口徹
【あらすじ】活字離れが急速に進み、出版不況の文学界。 そこに現れた15歳の天才少女「鮎喰響(あくいひびき)」の才気あふれる小説は、文学の世界に革命を起こす力を持っていた。 編集者・花井ふみとの出会いを経て、一躍脚光を浴びる響。 だが、彼女の歯に衣着せぬ物言いや、常軌を逸した行動は、世間の非難を浴びることに…。 ヒューマンドラマ。
原作:柳本光晴『響 小説家になる方法』

『響 HIBIKI』象のロケット
『響 HIBIKI』作品を観た感想TB

画像Copyright:(C)2018映画「響 HIBIKI」製作委員会(c)柳本光晴/小学館

hibiki1.jpg 【解説と感想】 才能って枯れるのだろうか? 何の才能もない私には経験がないので想像するだけだが、音楽家、画家、作家、陶芸家などクリエイティブな仕事をしている人の場合、一つの作品で脚光を浴びても、同じクオリティーのものが次も作れるとは限らない。スポーツ選手のように、芸術家が現役を引退して解説者になることはあまりない。納得できない作品を出し続けることは不本意だろうが、簡単にやめられない事情もある。第一線で華々しい創作活動をしている人は大変だ…。

近年、本や雑誌が売れず出版業界は困っている。新聞・テレビで宣伝したり、映画やドラマになれば原作本がそこそこ売れる。話題の人の自伝や暴露本が売れる。魅力的なハウツー本が売れる。しかし、地味な純文学はあまり売れない。インターネットの普及で、無料で読める文芸作品や、ブログもたくさんある。文芸誌なんて、私も何年も買っていない。本作はそんな出版不況の今、15歳という若さで出版界に彗星のごとく現れたシンデレラ・ガールの物語である。

主人公・鮎喰 響(あくい ひびき)を演じる平手友梨奈は、2015年に結成された女性アイドルグループ「欅坂46」のメンバーで17歳。センターを務めるだけあって、映画初出演とは思えない存在感を放っている。17歳で主演女優というのは、15歳の作家と同じくらいスゴい。彼女が今後、どんな女優になっていくのか楽しみだ。

響は昔ながらの文学少女だが、何事にも「妥協」できないトラブルメーカー。黙っていれば可愛いのに、感じたままをズバッと言う毒舌家で、よく言えば頑なで純な少女らしさを感じさせる。更に彼女はつい手や足が出てしまう暴力娘でもある。もちろん相手の方が悪いのだが、昨今は問答無用で暴力は不祥事になる時代だから、女性編集者・花井ふみ(北川景子)は後始末に奔走することになってしまう。

響の傑出した才能は、響の文芸部仲間・凛夏(アヤカ・ウィルソン)、先輩作家(柳楽優弥、北村有起哉、小栗旬)らに衝撃を与えた。響は謙遜も卑下もせず堂々としていて、惰性で駄作を書き続ける作家を許さない。「一生に一度の傑作」を書いた後も人生は続くから、近作を「つまらない」とハッキリ言われた先輩作家は辛いだろう。たとえ既に自身でそう感じていたとしてもだ。今後、響を納得させるだけの作品を、再び書けるか否かは分からない。しかし、15歳の少女・響が放つ辛辣な言葉は、彼らの気持ちを確実に変えていくのである。

出版業界や賞レースの舞台裏と、敵わない才能を目にした人々の葛藤を背景に、世に出るべくして出た女子高生作家の青春を描くヒューマンドラマ。お薦め作品だ

(象のロケット 映画・ビデオ部 並木)

 
 
posted by 象のロケット at 11:03| 超お薦め映画作品 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年09月03日

『パパはわるものチャンピオン』お薦め映画

★★★★★ 2018年製作 日 (111 min)
【監督】藤村享平
【出演者】
棚橋弘至
木村佳乃(ISOLA 多重人格少女、船を降りたら彼女の島、おろち OROCHI、蝉しぐれ)
寺田心、仲里依紗、寺脇康文、大谷亮平、大泉洋
【あらすじ】人気と実力を兼ね備えたエースレスラー大村孝志は、膝に大ケガを負ってしまう。 …それから10年、かつての強さを取り戻せない孝志は悪役レスラー“ゴキブリマスク”となり、客席からブーイングを浴びる日々を送っている。 理髪店を営む妻・詩織は応援してくれるが、孝志は自分の仕事を9歳になった息子・祥太に打ち明けられずにいた…。 ヒューマンドラマ。
原作:板橋雅弘/絵:吉田尚令『パパのしごとはわるものです』『パパはわるものチャンピオン』 主題歌:高橋優『ありがとう』

『パパはわるものチャンピオン』象のロケット
『パパはわるものチャンピオン』作品を観た感想TB

画像Copyright:(C)2018「パパはわるものチャンピオン」製作委員会

papawaru1.jpg 【解説と感想】 こちらも「プーと大人になった僕」のキャラクター原案となった「くまのプーさん」と同じく、原作は絵本。作:板橋雅弘、絵:吉田尚令の『パパのしごとはわるものです』と『パパはわるものチャンピオン』が原作で、それぞれ1〜2分で読めてしまう。こんな薄い本から話を膨らませ、父と息子の感動物語ができた。既にノベライズ(小説化)、コミカライズ(漫画化)もされているそうだ。

papawaru2.jpg 大村孝志(棚橋弘至)はトッププロレスラーとして活躍していたが、10年前に膝に大ケガをしてエースを退いた。以来、黒いマスクを付け反則だらけの悪役レスラー“ゴキブリマスク”として、客席からブーイングを浴びる毎日を送っている。だが9歳になる一人息子・祥太(寺田心)には、自分の仕事がレスラーであることさえ秘密にしていた。父親が悪役レスラーと知ったらショックを受けるだろうと配慮し、もう少し大きくなってから話そうと思っていたのだ。美容院を営む妻・詩織(木村佳乃)も同じ考えだったが、だんだん誤魔化せなくなってきていた。祥太は秘かに父の後をつけて秘密を知り、案の定ショックを受けてしまう。

papawaru4.jpg 父・孝志を演じている棚橋弘至(1976〜)は、新日本プロレス所属の現役レスラーであり、近年は映画やドラマにも出演している。プロレス界のスターなだけに、スクリーンでの存在感も十分。試合のシーンは見せ場であり、エンターテインメントとしてのプロレスも楽しませてくれる。息子に真摯に向き合う父親としての姿にも好感が持てた。俳優としても、今後もっともっと活躍できることだろう。

一方、木村佳乃は華やかなオーラを消して控えめな妻役に徹している。病める時も貧しき時も、夫を愛し支え添い遂げる何でもドントコイ妻の鏡のようで、役柄にも女優本人にも好感が持てた。そして祥太役の寺田心が、めちゃくちゃカワイイ! キッパリした物言いが出来るのに好きな女の子の前ではウジウジ悩む様子や、パパの仕事を知ってからの複雑な心境の表現も上手い。

papawaru3.jpg 世の中、強くてカッコイイお父さんばかりではない。病気のパパ、失業中のパパ、怒りっぽいパパ、頼りないパパ…、いろんなパパがいるだろう。完璧に見えるお父さんにだって、出来ないことがある、どうにもならないこともある。そんな父親の意外な一面を、子どもたちが知る時が、いつか必ずやって来る。それは決して恥ではない。その時、子どもは少しばかり親を理解し、一歩大人に近づく。どんな姿だろうと、家族のために頑張っているお父さんって、スゴくてエラいのだ。正体を知られた孝志が祥太に接する場面も、プロレスラーとして名誉挽回しようと頑張る姿も、真剣勝負の試合シーンもグッと来る。

私は映画を見る前にチラシをちょっと見ただけで、早くも涙が出そうになった。そして、本編を見たらやっぱり泣いてしまった。父と息子の絆が深まる感動ドラマ。お薦め作品だ。

(象のロケット 映画・ビデオ部 並木)

 
 
posted by 象のロケット at 20:20| 超お薦め映画作品 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年07月29日

『泣き虫しょったんの奇跡』お薦め映画

★★★★ 2018年製作 日  (127 min)
【監督】 豊田利晃(空中庭園、青い春、ナイン・ソウルズ、クローズ EXPLODE
【出演者】
松田龍平(長州ファイブ、青い春、恋の門 、昭和歌謡大全集)
野田洋次郎(トイレのピエタ)
永山絢斗(ソフトボーイ、フレフレ少女、クローバー、みなさん、さようなら)
染谷将太、渋川清彦、駒木根隆介、新井浩文
【あらすじ】横浜の小学生・瀬川晶司(しょったん)は、中学3年生の時、東京の奨励会(日本将棋連盟のプロ棋士養成機関)に入会した。 だが奨励会には年齢制限があり、26歳までに四段になれなかった晶司は退会を余儀なくされる。 人生の方向転換をすることになった晶司は、27歳で大学生となるが…。 実話から生まれたヒューマンドラマ。

『泣き虫しょったんの奇跡』象のロケット
『泣き虫しょったんの奇跡』作品を観た感想TB

画像Copyright:(C)2018「泣き虫しょったんの奇跡」製作委員会(c)瀬川晶司/講談社

shottan1.jpg 【解説と感想】 昨年2017年、歴代最多連勝記録を更新(29連勝)した藤井聡太棋士はトントン拍子で七段になった。若き大御所・羽生善治棋士は今年2018年に国民栄誉賞を受賞した。2人とも中学生でプロになった天才。今や何度目かの将棋ブームで、棋士が主人公の映画も2016年『聖の青春』、2017年『3月のライオン』、そして2018年の本作『泣き虫しょったんの奇跡』と続いている。本作は羽生善治と同じ1970年生まれの男の、実話から生まれた物語だ。

shottan2.jpg 主人公“しょったん”こと瀬川晶司(松田龍平)は、中学3年で東京の奨励会(日本将棋連盟のプロ棋士養成機関)に入会した。奨励会には年齢制限があり、例外はあるが26歳の誕生日までに四段になれなければ退会となる。三段で停滞した彼は、26歳で退会を余儀なくされた。27歳で大学生になり、卒業後は一般企業に就職。親のすねかじりが続き回り道はしたものの、これで真っ当なサラリーマン生活が送れるはずだったが…。

覚えてらっしゃる方もいるだろう。2005年、アマチュア棋士である35歳のサラリーマン(NEC系企業のシステムエンジニア)瀬川晶司は、日本将棋連盟にプロ入り希望の嘆願書を提出し、61年ぶりにプロ編入試験が行われることとなった。それまでは奨励会の落伍者に二度とチャンスはなかったので、試験が認められたこと自体が奇跡だった。

shottan3.jpg 彼は天才ではない。だからこそ人一倍努力し人付き合いも遊びも一切せず将棋一筋だったかというと、そうでもなかった。年齢制限のプレッシャーから逃げるように、先輩や奨励会の仲間(永山絢斗、染谷将太、渋川清彦、駒木根隆介)と遊ぶこともあった。頑張りたいのに頑張れない。のほほんとしているように見えるが、プロになれるかどうかわからないギリギリのラインにいる者たちの焦りと辛さが、痛いほど伝わって来る青春ドラマである。理解ある父(國村隼)、影響を与えた恩師(松たか子)、プロを目指さなかった親友(野田洋次郎)、奨励会でのエピソードから浮かび上がって来るのは、ひねくれずに育った者が持つ、人の好さである。ある意味それが、勝負師としてはいけなかったのかもしれない。

世の中、望む仕事に就けない人は山ほどいるし、様々な事情で就職が遅れる人もいる。幼い頃の夢を実現できる人の方が少ないのだから、プロ棋士になれなかったからといっても不幸ではない。実際のところ晶司は、奨励会を辞めてから逆に将棋の楽しさに目覚め、アマチュア名人として活躍することとなった。本人も、もう将棋は趣味に留めるつもりでいただろう。

shottan4.jpg プロ入り嘆願書は、現役・元の奨励会員やプロ棋士から反発も受けたはずだ。マスコミに大々的に報じられただけに、失敗したら笑い者になるだろう。合格しても将棋だけではメシが食えないかもしれない。サラリーマンを続ける方が安泰に決まっている。でももし好きな道で生きていけたら、これほど幸せなことはない。何より、奨励会以外からでもプロになれる道を拓いたことは、全国の将棋ファンに強くなる楽しみと夢を与える快挙であった。

浮世離れした天才も人を夢中にさせるが、凡人に天才の真似は出来ない。しかし挫折や絶望、紆余曲折を経て今がある人には味があり、その経験は万人の道しるべとなり共感を呼ぶ。一度は夢破れながらもプロ棋士に再挑戦した、諦めの悪い男の人生ドラマ。お薦め作品だ。

(象のロケット 映画・ビデオ部 並木)

 
 
posted by 象のロケット at 15:19| 超お薦め映画作品 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする