2017年09月13日

『奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール』お薦め映画

★★★★ 2017年製作 日 (100 min)
【監督】大根仁 (SCOOP!、モテキ、バクマン。)
【出演者】
妻夫木聡(スマグラー おまえの未来を運べ、ぼくたちの家族、ウォーターボーイズ、感染列島)
水原希子(高台家の人々、ノルウェイの森、進撃の巨人 ATTACK ON TITAN エンド オブ ザ ワールド、進撃の巨人 ATTACK ON TITAN)
新井浩文(斉木楠雄のΨ難、百円の恋、青い春、血と骨)
安藤サクラ、江口のりこ、天海祐希、リリー・フランキー
【あらすじ】おしゃれなライフスタイル雑誌編集部に異動になった35歳の男コーロキは、ミュージシャンの奥田民生のように「力まないカッコいい大人」の編集者になろうと決意した! そんな時、ファッションプレスの美女・天海あかりにひとめぼれ。 あかりに釣り合う男になろうと頑張るが、彼女に振り回されて身も心もズタボロになってしまう…。 ラブ・コメディ。
原作:渋谷直角 脚本:大根仁

『奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール』象のロケット
『奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール』作品を観た感想TB

画像Copyright:(C)2017「民生ボーイと狂わせガール」製作委員会


kuruwase1.jpg 【解説と感想】本作は女にのめり込む男の話である。振り回すのも振り回されるのも、本人たちが幸せなら何も言うことはない。ただしトラブル発生時は要注意。恋愛に加害者も被害者もないはずだが、いわゆる被害者はトコトン落ち込んで(あるいは逆上して)いるのに対し、いわゆる加害者には罪の意識があまりないのが世の常である。どんな形であれ、恋が始まったことや終わったことを、当事者以外の誰も非難はできないはずだ(週刊誌は散々騒いでいるが…)。

主人公コーロキ(妻夫木聡)は、地味な雑誌からオシャレなライフスタイル誌に異動してきた33歳の男。彼は、ミュージシャンの奥田民生(52歳)のような、「頑張らない、さりげなくカッコいい男」を目指している。奥田民生ってどんな人? どこがさりげなくってカッコイイの? って追及はしないでおこう。一応、コーロキが説明してくれる。

kuruwase2.jpg しかし、コーロキはファッションブランドのプレス担当の美女・天海あかり(水原希子)に一目ぼれ。彼女に振り回されて「さりげない」どころか「なりふり構わず」の毎日を送ることになってしまう。あかりは美人でスタイルも抜群、ファッションセンスもピカイチで、長―い脚にミニスカートとハイヒールがよく似合う(あんたモデルかい? 仕事出来るの? なんて野暮は言わない)。笑顔は悶絶するほど愛らしいが、ワガママで怒ると恐ろしい! 男はぞっこんメロメロだ。

もう一人、コーロキを振り回す人物がいる。人気コラムニストの美上ゆう(安藤サクラ)。ただでさえ遅筆なのに一つのことが気になると原稿が進まないタチで、いちいちそれに付き合ってやらねばならない面倒な女。原稿が間に合うのか、間に合わないのか、コーロキにハラハラドキドキのジェットコースター気分を味合わせてくれる。

kuruwase3.jpg 編集長・木下(松尾スズキ)は穏やかで頼り甲斐のある上司で、先輩・吉住(新井浩文)は何を考えているのか分からない怪しい人物。編集部で揉まれながら、コーロキはあかりに釣り合う「出来る男」になろうと、仕事の方も頑張っている。ただ、あかりはいつも「あかり最優先」でないと気が済まない女王様だから、両立の道は険しい。近年、仕事よりプライベートの方が大事だと公言する男性が増えていて、会社の行事や上司からの酒の誘いはもちろん、残業なども平気で断る強者が増えているらしい。「奥田民生」を目指すならば、コーロキはどうするべきなのか…? 

kuruwase4.jpg ところで、あかりに惚れているのは、実はコーロキだけではなかった。これだけの美女、アッサリ手に入る方がおかしい。あかりはコーロキだけを愛してくれる、実は純情な女の子なのだろうか? それとも、何の罪悪感なく男を手玉に取るプレイガールなのか? 笑顔で手を振るあかりを見れば、ああもう、この先どうなってもいーから、魔性の女に振り回されたーい! と思って当然。 一度はズタボロになったっていいじゃないか。
女に狂い惚れする男たちと、男を振り回す女たちの演技が面白すぎるラブ・コメディ。お薦め作品だ。

(象のロケット 映画・ビデオ部 並木)

 
 
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2017年09月05日

『ダンケルク』お薦め映画

★★★★★ 2017年製作 米 (106 min)
【監督】クリストファー・ノーラン(メメント、ダークナイト ライジング、ダークナイト、インターステラー)
【出演者】
フィオン・ホワイトヘッド、トム・グリン=カーニー、ジャック・ロウデン、ハリー・スタイルズ、アナイリン・バーナード、ジェームズ・ダーシー、バリー・コーガン
【あらすじ】第二次世界大戦中の1940年。 ナチスドイツのフランス侵攻により、40万人ものイギリスとフランスの連合軍兵士たちは、ドーバー海峡に面したフランス北端の港町ダンケルクまで追い詰められていた。 圧倒的な数のドイツ敵軍が迫る中、民間船までもが関わった史上最大の救出作戦が動き出す…。 実話から生まれた戦争アクション。

→『ダンケルク』象のロケット
→『ダンケルク』作品を観た感想TB

画像Copyright:(C)2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. All rights reserved.

dunkirk1.jpg 【解説と感想】先日の早朝、北海道上空をミサイル通過し、太平洋上に落下した。朝のニュースからは緊迫感が伝わってきたが、何をどうすることもできないので、普通に試写に出かけた。電車も思ったほど遅れず、いつもと変わらない一日だった。その後の報道も大騒ぎだったが、あっという間に収束した。平和ボケしている私たちは、そんなに簡単に戦争が始まるとは思っていない。今を「戦前」だったと思い返す、「戦中」「戦後」が、いつかやって来るのだろうか…。

dunkirk2.jpg 本作は第二次世界大戦中の実話から生まれた物語で、「ダンケルクの戦い」とは、ナチスドイツのフランス侵攻によって、フランス北端の港町ダンケルクに追い詰められたイギリスとフランスの連合軍兵士40万人の救出作戦のことである。時はドイツに勢いがあった頃の1940年5月24日。連合軍はここで戦っても勝ち目はないと撤退を決めたものの、全員が乗るだけの船はない。空からは攻撃を受けている。さて、どうするか? 

dunkirk3.jpg ここでは誰一人自決などしない。これが最後ではないからだ。一旦退くのは次の戦いに備えるためで、まだまだ兵士たちには働いてもらわなくてはならない。とは言え、若い兵士の頭にあるのは生きて祖国へ帰ることだけ。猛烈に腹も減っている。40万人とはすごい人数で、「史上最大の」救出作戦と言われている。

dunkirk4.jpg 陸では、大勢の連合軍兵士が、心細い思いで救出を待っている。空では、ドイツ軍の爆撃機を味方のパイロットが追い払おうと必死で戦っている。沖合では墜落したパイロットが助けを待っている。港では全員を乗せられないと艦長が険しい表情をしている。そして、祖国イギリスからは、救出船が足りないとの連絡を受けた民間船が、戦地ダンケルクへ向かっている。まさに、陸海空の大掛かりな救出作戦である。ダンケルクからイギリスまでは、ドーバー海峡を隔ててわずか42キロ程らしいが、負傷し追い詰められた兵士たちには、気が遠くなるほど遠く感じられたことだろう。

dunkirk5.jpg 印象的なのは、民間船の船主の、「若者を戦地へ行かせた責任を取らねばならない」という言葉。彼の息子も出征しているらしい。そう、いつも戦争で死ぬのは前途ある若者で、戦争を始めるのは、決して戦地へ行くはずもない年取った大人なのだ。日本も元気で優秀な若者を戦争で大勢失った。

群像劇なので、誰が主人公と言うよりも、「監督クリストファー・ノーラン」がバーンと前面に出ている。見る前から「映像がすごい」などと、イメージが刷り込まれてしまっていた。見たところ、確かに「すごい」映像で臨場感がある。大きなスクリーンで見た方が満足度も高いだろう。しかし、やはり人あってのドラマである。兵士たちの憔悴しきった表情に、それでも生きようとする姿に、味方を守ろうとする頑張りに、命がけで救出に向かう心意気に、私たちは心を動かされるのだ。

dunkirk6.jpg 日本・ドイツ・イタリアの三国同盟が締結されたのは、このダンケルク救出作戦後の1940年9月27日。第二次世界大戦では連合軍は日本の敵だったが、今の日本でそんなことを気にしている人はいないだろう。この時の、ドイツ軍、フランス軍、イギリス軍の内部事情はそれぞれあるらしいが、そんなに気にしなくてもいいと思う。史実より映画そのもの、イギリス人監督が描く「英国人の誇り」を、純粋に褒め称えたくなる戦争ドラマ。お薦め作品だ。

(象のロケット 映画・ビデオ部 並木)

 
 
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2017年07月08日

『世界は今日から君のもの』お薦め映画

★★★★ 2017年製作 日 (106 min)
【監督】尾崎将也
【出演者】
門脇麦(こどもつかい、14の夜、太陽、オオカミ少女と黒王子)
三浦貴大(監禁探偵、繕い裁つ人、桜並木の満開の下に、RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語)
比留川遊(最後の命)
岡本拓朗、安井順平、駒木根隆介、マキタスポーツ
【あらすじ】引きこもりがちな毎日を経て、ようやく始めたアルバイトをクビになった女性・真実。 ニート生活に戻ることを心配した父は、娘に新しいバイト先を見つけてくる。 それは新作ゲームをプレイして、バグ(欠陥)がないかチェックする“デバッカー”という仕事だった。 そこで真実は、思わぬ才能を開花させる…。 青春ドラマ。 ≪笑顔まで、あと少し。≫

『世界は今日から君のもの』象のロケット
『世界は今日から君のもの』作品を観た感想TB

画像Copyright:(C)クエールフィルム

kiminomono1.jpg 【解説と感想】学生ならば学校へ行かず、成人ならば仕事をせず、自分の部屋からほとんど出ない「引きこもり」人口は増加の一途だという。引きこもりと似ていて少し違うのが、引っ込み思案や内気な性格。極度の引きこもりは生活が立ちいかなくなるので直した方がいいが、引っ込み思案や内気なのは個性だから、無理に変えなくてもいいのではないかと思う。

本作の主人公・真実(門脇麦)は、引きこもり生活から一歩前進しアルバイトを始めたが、笑っちゃうような事故のせいでクビになる。娘が再び引きこもっては大変だと、父(マキタスポーツ)は早々に新しいバイト先を見つけてくる。それは新作ゲームをプレイして不具合を探す「デバッカー」という仕事で、一日中ほとんど誰とも話さず大好きなゲームが出来るというもの。引きこもり先が自分の部屋から勤務先のゲーム会社に変わっただけのようにも見えるが、ゲーム会社にとっては重要な仕事だし、ちゃんと給料がもらえる。真実には打ってつけの仕事だった。

ひょんなことから、彼女にイラストを描く才能があることが発覚する。自室に引きこもっている間、彼女はゲームをしたり、絵を描いたりしていたのだ。どんな人生にも無駄はないということだろうか。しかし、イラストが本業になるかはまだわからない…。

kiminomono2.jpg 真実がイラストを描くきっかけになったのも、彼女の才能に気づいたのも、ゲーム会社の製作部ディレクター矢部遼太郎(三浦貴大)。真実が遼太郎に好意を持つのは当然かつ自然な流れなのだが、この2人の距離感が絶妙で三重マルなのである。いいなー、この描き方! 三浦貴大にも改めて注目してしまった。


kiminomono3.jpg もう一人、彼女に大きくかかわるのが安藤恵利香(比留川游)という男前な女性。真実と恵利香が出会うサバゲー(サバイバルゲーム)シーンは見せ場の一つ。二人の性格は正反対だが、違いすぎるから相手の欠点が気にならないのだろう。娘に恵利香のようなしっかり者の友人が出来たと知ったら、父親は泣いて喜ぶはずである。

真実のファッションは、すべて古着から選んだのだという。内気だがイラストが得意な真実らしく、多色使いでも派手にならない大人しい感じのガーリーなコーディネート。若い子なら真似したくなるだろう。監督がイメージしたのは「アメリ」のような風変わりな女の子というから、ピッタリだ。カッコよすぎるサバゲーの衣装も、似合わないようで似合っている。

kiminomono4.jpg 自分の定規を押しつけがちな母親(YOU)を除き、真実の周囲の人間はみな、不器用で引っ込み思案な彼女の性格を理解して、遠巻きに応援している。あまり近くに寄ると、彼女は逃げ出してしまうだろう。先を急がないストーリー展開にも好感が持てる。登場人物がみな個性的で、セリフの言い回しや表情が面白い。何より女優・門脇麦の良さが存分に生かされていると感じられる作品だった。元ひきこもりの女の子が少しずつ成長してゆく、ユーモラスなハートウォーミング・ストーリー。お薦め作品だ。

(象のロケット 映画・ビデオ部 並木)

 
 
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2017年05月27日

『光』お薦め映画

★★★★★ 2017年製作 日 (102 min)
【監督】河瀬直美(七夜待、2つ目の窓)
【出演者】
永瀬正敏(KANO 1931海の向こうの甲子園、スマグラー おまえの未来を運べ、誘拐、隠し剣 鬼の爪)
水崎綾女(ReLIFE リライフ、進撃の巨人 ATTACK ON TITAN エンド オブ ザ ワールド、進撃の巨人 ATTACK ON TITAN、BUNGO 〜ささやかな欲望〜 見つめられる淑女たち)
神野三鈴(日本のいちばん長い日)
小市慢太郎、早織、大塚千弘、大西信満
【あらすじ】ディスクライバー(音声ガイド原稿制作者)の尾崎美佐子は、視覚障害者向けの映画音声ガイドの仕事に携わることになった。 そこで視力を失いつつある弱視の天才カメラマン中森雅哉と出会う。 表現に細かく注文を付ける雅哉に反発する美佐子だったが、彼が過去に撮影した写真を見て心を動かされる。 しかし音声ガイドの方は、何度書き直しても皆が納得するものができないのだった…。 ラブ・ストーリー。

『光』象のロケット
『光』作品を観た感想TB

画像Copyright:(C)2017 “RADIANCE” FILM PARTNERS/KINOSHITA、COMME DES CINEMAS、KUMIE

hikari1.jpg 【解説と感想】例えば駅の中を歩く人の中で、一目で身体障害者と分かるのは、足の不自由な人と目の不自由な人だ。なぜなら、車椅子や松葉づえ、白い杖は目立つから。耳の聞こえない人、声が出せない人、内臓疾患を抱える人は、見た目からはわからない。見た目で分かる障害者と分からない障害者には、どちらにも犯罪や事故に遭う危険がある。東京オリンピックへ向けて工事中の駅が多いが、まだまだバリアフリーにはほど遠い世の中だ。今回の作品には、目が見えない人も映画を楽しめる「音声ガイド付きバリアフリー上映」に携わる人々が登場する。

本作の主人公は、かつては天才カメラマンとして知られた存在だった中森雅哉(永瀬正敏)。彼は急激に視力が低下していて、完全に見えなくなる日がもうそこまで来ている。声が出ない歌手、音が聞こえないオーケストラ指揮者、足が不自由なサッカー選手と同じく、その苦悩たるや絶望に近いものがあるだろう。撮影への意欲と執着を捨てきれないでいる彼は、片時もカメラを手放すことができない。

hikari2.jpg 他の視覚障害者と共にバリアフリー映画のアドバイスもしている雅哉は、ディスクライバー(音声ガイド原稿制作者)の尾崎美佐子(水崎綾女)と出会う。彼女は精一杯頑張っているのだが、いかんせん未熟さが目立つ。それは仕事の経験というより、若くて人生経験が足りないせいだと言えるだろう。音声ガイドを利用する人の立場になって原稿を書くことが、まだ出来ずにいるのだ。そこを痛いほど的確に突いてくる雅哉の意見は辛辣で、美佐子を苛立たせる。

外国映画が日本で上映される場合、吹替とは別に、台詞が日本語になっただけの字幕スーパーがあるが、それとは別に、もっと分かりやすく細かい配慮がなされた難聴者向けの字幕がある。そして、視覚障害者向けには、音声ガイドというものがある。本作は、あまり知られていない音声ガイドの仕事が良く分かる内容になっていて、視覚障害者の手助けになりながらも邪魔をしない程度の音声原稿に仕上げるまでの過程が、丁寧に描かれている。美佐子自身が、担当する映画作品、そして目が見えない人のことを本当の意味で理解していなければ、映画製作者と視覚障害者が満足するような音声原稿は作れない。試写シーンで披露される、美佐子を悩ませた場面の最終稿は感動的で、映画と劇中劇がピタリと重なって見えた。

hikari3.jpg 雅哉を演じる俳優・永瀬正敏の演技が素晴らしい。彼は写真家としても活動しており、プライドが高い天才カメラマンのアーティスト・オーラを醸し出している。渋さとカッコよさが混在していて、美佐子が惹かれていくのも納得だ。一見、似合わない2人が近づいていく過程といい、全体が自然な流れで割とゆったりした印象なのに102分という尺なのは、ストーリーがシンプルだからだろう。暗闇の世界に向かいつつある男のラブ・ストーリー。お薦め作品だ。

(象のロケット 映画・ビデオ部 並木)


 
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2017年01月23日

『サバイバルファミリー』お薦め映画

★★★★ 2017年製作 日 (117 min)
【監督】矢口史靖(WOOD JOB! 神去なあなあ日常、ウォーターボーイズ、ロボジー、アドレナリンドライブ)
【出演者】
小日向文世(仄暗い水の底から、愛を乞うひと、いま、会いにゆきます、重力ピエロ)
深津絵里(ステキな金縛り、恋ノチカラ TV版Vol.1〜4、女の子ものがたり)
泉澤祐希(君と100回目の恋)
葵わかな、菅原大吉、徳井優、桂雀々
【あらすじ】ある朝、緊急事態が発生する。 テレビや冷蔵庫、スマホにパソコンといった電化製品ばかりか、電車、自動車、ガス、水道、乾電池に至るまで、電気を必要とするすべてのものが完全にストップしてしまったのだ! 情報も絶たれた中、突然訪れた超絶不自由生活。 東京に暮らす鈴木家の父親は、一世一代の大決断を下す…。 サバイバル・ドラマ。

『サバイバルファミリー』象のロケット
『サバイバルファミリー』作品を観た感想TB

画像Copyright:(C)2017フジテレビジョン 東宝 電通 アルタミラピクチャーズ

survival1.jpg 【解説と感想】年末年始、私はほぼ潜伏生活を送っていた。一歩も外へ出なくても、続々と年末年始のご馳走や正月飾りが届く。汚れ物は白物家電にお任せ。室温・湿度も快適。それもこれも通販、宅配便、便利家電のおかげである。ありがとう!
しかし、ライフラインがストップしたら、こんな食っちゃ寝グータラ生活は送れないのである。年末に観た本作を思い出し、毎日の有り難さを噛み締める正月であった。

そう、本作「サバイバルファミリー」は、電気・ガス・水道がストップしてしまうお話である。なぜか乾電池も使えなくなり時計も動かない。ガソリンで動くはずの自動車も動かない。動く乗り物は自転車だけ。テレビ・ラジオやスマートフォンも使えないので、どこかで大災害があったのか、なかったのか、この不便な生活がいつまで続くのかも、全く分からないのだ。

主人公は、この危機に直面した鈴木一家4人(父・母、思春期の息子、娘)。食べ物も水も手に入らなくなり、このまま家にいても餓死を待つばかり。亭主関白を気取る父(小日向文世)は東京を捨てる決心をし、俺について来いと宣言する。田舎に行けば何とかなると思ったのだ。しかし、自転車でようやく空港へたどり着いたものの、当然のことながら飛行機は飛んでいない。文句を言いながらもついて来た家族は、父が頼りにならないことを再認識する。

妻(深津絵里)は主婦ならではの備えと知恵を発揮し当座をしのぐ。生活面では母強しである。しかし、日頃の運動量も少なく華奢な母には、体力がなかった! 息子(泉澤祐樹)、娘(葵わかな)は、カッコつけとスマホ生活から抜けられないイマドキの若者である。特に娘のブータレ状態ときたら話にならない。

survival3.jpg こんな時、他人の面倒まで見ていられないのはお互い様。途中、印象的な4人家族(父:時任三郎、母:藤原紀香、息子二人:大野拓朗・志尊淳)が登場する。彼等は日頃からアウトドア生活に慣れ親しんでいるらしく、服装も持ち物も準備万端。「ボクたちこんな非常事態だって楽しんでますよ」という雰囲気がちょっと鼻につく。頼りがいある両親とハンサムな息子たちを、鈴木家の娘は羨望の眼差しで見つめる。ウチのオトーサンとは雲泥の差! 情けないが仕方ない。娘はダメ親父について行くしかないのだ。

survival5.jpg もう飢え死にしそうだという時、鈴木一家は老人(大地康雄)宅で意外な親切を受ける。普段はバカにしている田舎に、煙たがっている老人に、ほぼ就活の対象外である農林水産業に、イザという時は必ずお世話になるのだ。いつも口にしている野菜や肉・魚、豊富にあると思っている水や電力も、供給しているのは地方なのだということを、都会人はウッカリ忘れている。戦争の時も、震災の時も、多くの人々が地方へ移動した。田舎の方が都会より自然豊かで、人情があり、簡単に食料が手に入り、安全で健康的な生活を送っているイメージがある。実際はそうでもないのだが…。

survival4.jpg 大災害発生時、直接の被災は免れても、水道・ガス・電気の供給や交通機関が一時ストップし、大変な思いをされた方々は多いだろう。そんな時、ラジオやインターネットの情報が頼りとなる。しかし本作の場合はそんな情報機器すらも使えない。普段、情報に踊らされている私たちだが、情報がなければ自分の判断で動くしかない。

 さて、ボロボロになりながらも鈴木一家は自転車で苦難の旅を続ける。もし目的地にたどり着いたとしても、そこでどうするのか? 2011年の東日本大震災から5年以上が経過したというのに余震はまだまだ続いているし、最近の地震は首都圏大震災の前震ではと煽る人もいる。防災用品は準備万端の方もそうでない方も、アウトドア生活が趣味の方も苦手な方も、頼る田舎がある方もない方も、参考のために見て欲しい。深刻になり過ぎない明るい冒険サバイバル。お薦め作品だ。

(象のロケット 映画・ビデオ部 並木)

 
posted by 象のロケット at 15:44| Comment(0) | TrackBack(2) | 超お薦め映画作品 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする